コミックス発行部数が5億部を超える人気漫画が『ONE PIECE』。劇場版映画も定期的に公開されており、近年は安定して興行収入50億円を叩き出しております。
元ロジャー海賊団のダグラス・バレットを敵役に据えた2019年公開の『ONE PIECE スタンピード』は日本国内だけで興行収入は55億円を突破しました。そして、2022年8月6日に劇場版映画『ONE PIECE FILM RED』が公開されました。
そこで今回ドル漫では『ワンピース フィルム レッド』の感想をレビューしていこうと思います。果たして前回のラフテル並の伏線があったのか?正直ネタバレされた程度で内容の面白さが変わるとは思いませんが、一応、ネタバレ注意です。
ちなみに、タイトルに『FILM』と付いているものの、コミックス40億巻によると尾田さんが大まかなプロットを考えただけで、主に谷口悟朗という監督が作ったそう。この谷口悟朗はワンピースの一番最初の映画を制作した映画監督で、また谷口悟朗自身のデビュー作。
それだけ尾田さん的にも思い入れのある映画に仕上がっている模様。
ONE PIECE FILM REDの内容あらすじ
まずは『ONE PIECE FILM RED』の内容あらすじを解説します。
舞台は音楽の島・エレジア。
そこでは【ウタ】と呼ばれる絶世の歌声を持つ少女がコンサートを開こうとしていた。これまでウタは特殊な電伝虫で歌声を披露していなかったが、ついに初めてウタの姿と生歌がお披露目されることもあって世界中から何万人という観衆が集まっていた。
そこに麦わらの一味の姿もあった。ひょんなことをキッカケに、ルフィは舞台に上がると思わずウタに嬉しそうに話しかける。何故なら、ルフィとウタは幼馴染だったから。
しかもウタは「赤髪のシャンクスの娘」だったことをルフィは暴露する。麦わらの一味だけではなく、思わず観衆もどよめくのであった。
ただ「赤髪のシャンクスの娘」と発覚したことで、ビッグマム海賊団のオーブンなど凶悪な海賊が次々とライブ会場に襲撃してくる。しかしウタは恐れることはなく、ウタウタの実を使って華麗に海賊たちを捕縛していく。そして、ウタは「とある計画」の実行に動く。
このとある計画を阻止するため赤犬サカズキなど海軍も動いていた。果たしてウタの計画とは?ウタの運命は?ウタの目的とは?
【総合評価】ワンピース初心者でも楽しめる映画
ということで『ワンピース フィルム レッド』が面白いかつまらないか、これから個人的な感想をレビューしていこうと思います。ただストーリーの詳細な流れや結末は割愛します。でも、ラストの結末については若干ネタバレが含まれるかもしれないのでご注意ください。
結論から言うと、普通に「面白い映画」だったと思います。
とにかく初っ端からAdo(ウタ)の熱唱シーンから始まります。大体こういうパターンはすぐ終わることが多いと思うんですが、ウタが2分3分ずっとフルコーラス歌ってる。感覚的にはウタが全然歌い終わらないので、本当に【Adoのコンサート】に来たのかと一瞬戸惑うほど。
だから良くも悪くも、ワンピースらしくない映画ゆえに映画サイトのレビューでは炎上気味だったりするよう。でも逆に言うと「ワンピース初心者でも楽しめる映画」に仕上がっています。
事実、可愛らしい見た目のウタがAdoの歌に合わせて踊り続けるので、さながらバーチャルユーチューバーのコンサートも彷彿とさせる演出になっている感じです。尾田さんは流行り物好きなので、意図的に若者受けを狙っている印象を受けます。
事実、ウタは生い立ちの影響もあって「空想の世界」に入り浸ることが好きだった。まさにバーチャルとの関連が伺えるキャラ設定ではあります。
○ミュージカル映画として観ると良し
またAdoの歌は「掴みの前半」と「締めの後半」に来ることが多く、実際にずっと歌っているわけではなく、要所要所の決め所や見せ場でAdoの歌が来るので言うほど食傷気味にはならない。全体的に飽きさせないストーリー構成になっている感じです。
だから最初の違和感もわりとすぐ消えて、いつの間にかストーリーや物語に引き込まれて、最終的には「何回も観たくなるような映画」には仕上がってる気がします。さながらディズニーのミュージカル映画を彷彿とさせます。それ故に好みがハッキリ分かれるとは言えますが。
キャラクターも相変わらずワチャワチャと多いものの、バトルシーンでは各々に活躍するため、映像的には派手に演出されています。正直端役キャラをそこまで活躍させなくてもいいのでは?という気もしますが、ミュージカル映画のように映像的に何度観ても飽きさせない内容だと思います。
ウタの可愛らしさが前面に出てくるので若干の子供っぽさは感じさせるものの、そこらへんは従来のワンピース感やバトル描写の多さで払拭させれている気がします。ビンクスの酒を筆頭に、歌詞も今後の展開を予感させる内容になってるので何度も聴きたくなる歌も多いです。
ONE PIECE FILM REDのつまらないポイントは?
ただ当ドル漫は基本的にレビューブログということもあって、『ONE PIECE FILM RED』のつまらない点も評価しようと思います。
前述の通り、映画はさながらAdoのコンサートといった内容でした。そのため赤髪のシャンクスを彷彿とさせる『RED』という映画タイトルのイメージ像とはやや遠い印象です。シャンクスもそれなりに活躍するものの、そこ目当てで観ると肩透かしを食らうかも知れない。
ちなみに、シャンクスに関する伏線などは後述します。
またウタが完全に新キャラクターすぎて、やや感情移入しづらい。
先にネタバレしておくと、最終的にウタは死亡してしまう。シャンクスは「ウタの育ての親」として、実際に7年もの長期間一緒に過ごしていた。だからルフィも含めて関連性が深いキャラなので、もし生きていると本編に今後も大きく関わってくることも大きな要因か。
ただもし泣かせるオチであれば、読者の頭に「ウタはどういうキャラクターか」をあらかじめ刷り込ませた上で観せた方が良かった気がする。映画の中でいきなりシャンクスが実は少女を育ててましたと言われても、すぐピンと来るワンピース読者は少ないでしょう。
特に映画は熱唱シーンがメインでもあったので、まず各々の関係性を理解・納得することに力が割かれてしまう印象です。だから「ウタは本当にシャンクスの実の娘だった?」など事前に情報を出し惜しみしすぎず、【ウタの物語】をあらかじめ漫画化しておいて良かった気がする。
例えば、『鬼滅の刃』の煉獄杏寿郎、『呪術廻戦』の乙骨優太なども、あらかじめ単行本化されていた内容をそのまま映画化しただけでした。ネタバレ禁止のお触れが公式から出されていましたが、特に興行収入に効果はないアナウンスだった気はします。
赤髪のシャンクスはDの一族?天竜人?
続いては赤髪のシャンクスの正体について深掘り考察していこうと思います。やはり映画タイトルに『RED』が付いている以上、シャンクスに関わる謎や伏線が描かれているに違いない。
結論からネタバレしておくと、赤髪のシャンクスは1歳の頃に【ゴッドバレー島】で「ゴールド・ロジャー」に拾われたことが判明します。ロジャーは光月モモの助が産まれた時、「赤ん坊なんて久しぶりだな」と語っていましたが、これは幼少期のシャンクスをダブらせていた発言でした。
一方、ゴッドバレー島ではロックス・D・ジーベックが敗北した場所でもありました。このロックスは黒ひげ(マーシャル・D・ティーチ)との血の繋がりが伺える世界最強の海賊でした。
そのためシャンクスもロックスの実の息子と仮定したら、黒ひげとシャンクスが実の兄弟だった可能性なども考えられます。事実、ヨハネ黙示録も読み解くと2人の兄弟説も伺える上、確かに二人の年齢差も1歳しかないのも意味深。
事実、映画タイトルの「Dの部分」には三本傷が刻み込まれている。シャンクスの傷の位置とピッタリ合う。これはシャンクスも同様の「Dの一族」だったと仮定したら、まさに本名は【ロックス・D・シャンクス】と予想できそう。
○天竜人の家系か?黒ひげと兄弟か?
だから、もしシャンクスと黒ひげの血が繋がっているとしたら、実は黒ひげを守るために動いている?少なくともシャンクスと黒ひげは仲間だった可能性は高そう。
ただし、ゴッドバレー島の拾った戦利品の宝箱から出てきたとしか確定していないため、ロックスの息子だったと判断するのはやや早計ではあります。ゴッドバレー島では天竜人が何らかの計画を進めていたとされており、シャンクスの血筋は天竜人だった可能性も強く匂わせます。
もしシャンクスが天竜人の血筋を引く、ないし天竜人に近い関係の血筋を引いていたら、五老星に「君だから時間を取った」と言わしめた理由も納得ですし、五老星と裏で通じてる理由も納得。
シャンクスの圧倒的な強さを考えると、ワンピースのラスボスと思しきイム様も真っ先に排除の対象にすべきですが全く相手にしていない。五老星以上にイム様はシャンクスを信頼しているようにも思えます。そのことからシャンクス≒天竜人説の方が可能性としては高いか。
だからシャンクスは西の海出身とは確定しているものの、果たしてゴッドバレー島まで誰が連れてきたのか?という視点が今後焦点になってきそう。
ウタの二面性は「シャンクスの悪の顔」を象徴?
改めて確認しておくと、この『ONE PIECE RED』のヒロインはウタでした。
このウタは特に「髪の毛」が特徴のキャラクターでした。髪色は左右に「紅白のツートンカラー」にハッキリと分かれており、髪型はさながらややアシンメトリーな「のし袋」風。背中には衣装の白い翼も生えているんですが、このキャラデザにも深い意味がありそう。
何故なら、ウタは【ルフィとシャンクスを元に生まれたキャラクター】だから。
事実、ウタの髪の毛の色も「赤」はシャンクスを意味し、「白」はルフィを意味している。先にオチをネタバレしておくと、最終的にルフィはラスボスを倒す際にギア5の状態になります。幻獣種のヒトヒトの実モデル・ニカがちょっとだけ覚醒してる。
つまり、ウタの白はギア5状態のルフィを指していることは間違いない。
ちなみに2人は別次元に隔離されていたため、シャンクスがギア5状態のルフィを確認できていない模様です。だからワンピース1054話でシャンクスが手配書を見て初めてルフィのギア5を確認していたものの、この状況と矛盾することはありません。
○ウタが最後にラスボス「魔王」を生み出す
一方、ウタの性格は「二面性」を持っていました。明るくフレンドリーな反面、意に沿わない人間を排除しようとするなど、考え方や発想がどこか独善的。ルフィとの勝負でも卑怯な手段で勝とうとしたり、意外とヒロインらしくない面も多く描かれていました。
そして、最終的にウタのウタウタの実(超人パラミシア系)が暴走して、トットムジカという楽曲を歌ってしまうことで「魔王」という巨大なバケモノが誕生する。だからウタはヒロインでありながら、あくまで結果論ではあるものの、最終的にボスとして立ちはだかる。
一応、最後はルフィとシャンクスが結託して魔王を倒し、40億巻でも「悪者はトットムジカだけ」と解説されてはいます。それでもウタの性悪な一面も含めて、純粋な善という立場だったかというと微妙なところ。もちろん、それ故にウタは苦しんだりする。
○善がルフィ、悪がシャンクス?
つまりまとめるとウタが持つ二面性は【善の部分】がルフィ、【悪の部分】が赤髪のシャンクスを意味していたのではないか?つまりウタの存在そのものが、今後の【ルフィ vs 赤髪のシャンクス】という対立構造を示唆する伏線だった。
シャンクスがウタの育ての親であれば、何故わざわざ敵サイドとして描く必要があったのか。普通に味方サイドの立ち位置で構わないはず。でもシャンクスの立ち位置が敵サイドであれば、ウタがボスとして描かれるのも納得が行くと思います。
少なくとも今回の映画では赤髪のシャンクスは悪者の敵としては描かれないものの、ただコミック40億巻では「ウタの計画は失敗してそれでよかったですけど、【新時代】を誓いあったルフィが生きています。もしかしたらシャンクスも…」と、その後の解説が隠されてる。
何故、ここでシャンクスの解説を濁す必要があったのか?まさにシャンクスの正体が最終的にルフィを裏切る敵だからではないか?
実際、これまで『FILM』と名が付く劇場版映画のタイトルを振り返ると、「Z=ゼファー」「GOLD=テゾーロ」「STRONG WORLD=金獅子のシキが根城にしていたメルヴィユ」といった具合に、ほとんどの副題は【敵】を象徴するものばかりでした。
今作の『RED』はまさにシャンクスが敵である証拠。
シャンクスの家系が天竜人の可能性が高いことも考慮すると、三本傷が付いたDのロゴマークはシャンクスがDの一族だったという意味ではなく、【Dの一族のルフィを攻撃する敵】を意味する演出だったとしたら納得が行くはず。
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