少年ジャンプが誇るシコシコ漫画が『ゆらぎ荘の幽奈さん(ゆらぎそうのゆうなさん)』。作者はミウラタダヒロ。出版社は集英社。
「ゆらぎ荘」という同名の温泉宿を舞台に、さまざまな可愛い幽霊や妖怪がくんずほぐれつで読者の股間をフィーバーさせにくる漫画でした。
でも残念ながら『ゆらぎ荘の幽奈さん』は2020年6月に完結し、最終24巻は同年12月に発売されたばかりです。当初は結構人気だったものの、『ゆらぎ荘の幽奈さん』の最後はどうやら打ち切りだった?
そこで今回ドル漫では「ゆらぎ荘の幽奈さんの最終回・最終話のネタバレ感想」を画像付きでレビューしました。最後の少年ジャンプの巻末コメントや描き下ろしの200話のネタバレ感想など幅広くレビューしてます。
ただし、「そっち系」の画像は割愛してます。もし抜きたい人はコミックスを是非ご購入ください。コミックスでは「湯けむり」が描かれてないのでおすすめです(*´Д`)
最終回までのあらすじ
まずは「最終回までのあらすじ」を簡単に考察します。展開の流れが少し複雑なので流し読み推奨。
主人公・冬空コガラシは宵ノ坂醸之介の禁術(融合)によって肉体を奪われてしまう。コガラシは自身の肉体ごと粉砕して醸之介を倒すが、コガラシの幽体も霊子レベルに分解されてしまった。
その分解したコガラシの幽体が霧散するのを防ぐため、湯ノ花幽奈は結界の中に封じ込めて事なきを得る。でもこの状態で冬空コガラシはもちろん復活しない。
そこで流禅が「とある術」を使う。
その術とはゆらぎ荘の各々のメンバーに「コガラシと結ばれる予知夢」を見せて、その恋の絆を成就させることで冬空コガラシを復活させるというもの。擬似的に複数人の魂を憑依させることで、コガラシの霊力を爆発的に復活させるという理屈らしい。
一方、醸之介が用いた融合の禁術が暴走。さまざまな妖怪とゴチャ混ぜに取り込んで合体してしまい、巨大な悪鬼に変身してしまう。果たしてゆらぎ荘のメンバーは悪鬼を倒すことができるのか?コガラシを復活させることはできるのか?
湯ノ花幽奈の未練とは?
最後の予知夢は「湯ノ花幽奈」。
湯ノ花幽奈の正体は天狐幻流斎(てんこ・げんりゅうさい)。天狐家の始祖である白叡が娘・幻を不老不死にするため、その実験体(複製体)として生み出された一人だった。そのため湯ノ花幽奈は物心付く前から人間らしい生活をさせてもらえなかった。
しかし、その生活で出会ったのが流禅。流禅が「幻流斎が死後も現世に留まる未来があった」と告げると、自身の霊術と組み合わせることで幻流斎はあらゆる未来を体験する。その中に「ゆらぎ荘でコガラシと楽しく暮らす生活」があった。
つまり、ゆらぎ荘の地縛霊になった理由は「コガラシと暮らす日々」そのものだった。ただ幻流斎としてコガラシと生活すると未練が晴れてしまうため、自らの記憶を封じて「湯ノ花幽奈」としての生活を始める。
最終回はハッピーエンド?
ということで『ゆらぎ荘の幽奈さん』の最終回を考察。今更ですがネタバレ注意。
その後「湯ノ花幽奈」として生活する中、ゆらぎ荘に6代目八咫鋼の魔境院逢牙が襲来してくる。約100年前の餓爛洞との戦いで敗れた魔境院は復讐のために、天狐幻流斎(湯ノ花幽奈)を討伐しにゆらぎ荘に乗り込んできた。
一方、記憶を自ら封印した湯ノ花幽奈にとって魔境院の目的はチンプンカンプンでしたが、冬空コガラシが身を挺して守ってくれる。しかも何度未来予知を繰り返しても、冬空コガラシは必ず湯ノ花幽奈(天狐幻流斎)を助けに現れた。
しかし冬空コガラシは何度も魔境院逢牙を前に破れて死亡。
そこで湯ノ花幽奈(天狐幻流斎)は余命幾ばくもない中、冬空コガラシが助かる道を探す。荒覇吐呑子を仲間にするなどゆらぎ荘の仲間が増えたことで、魔境院逢牙とは無事和解できた。
ただその後、宵ノ坂醸之介がやはり現れてコガラシは死亡を何度も繰り返す。
そこで湯ノ花幽奈は「天狐幻流斎の記憶」を完全に取り戻すことを決意。本来のパワーを取り戻せば勝てると考えた。自分が成仏してもいいからコガラシが助かる道を探る。
そして湯ノ花幽奈は「本来のパワー」に加えて、ゆらぎ荘のメンバーの能力や助けも加わることで無事悪鬼を撃破。冬空コガラシの肉体は再生し、魂も無事取り戻すことに成功。宵ノ坂醸之介は消滅し、平和が訪れたゆらぎ荘だった。
しかし、湯ノ花幽奈の成仏問題は解決してない。
ただ冬空コガラシが「幽奈が俺を救おうとしてくれたように俺も…だから逝くな」と説得。コガラシの霊媒体質は数々の戦いで強化されていた。そして、幽奈の未練を暴走させることで天国への道を強制的にシャットアウトさせることに成功。すべての記憶が戻っても幽奈が成仏することはなかった。
そして再びコガラシと幽奈たちの楽しい生活が始まったのであった(ちゃんちゃん)…という結末でした。
【打ち切り】ラストが分岐ルートだった理由とは?
一方、ゆらぎ荘の幽奈さんの終盤の展開は「分岐ルート」という手法が取られてました。言い方を変えると「マルチエンディング的」な終わり方。
詳細なネタバレはしませんが、主人公・コガラシと様々なハッピーエンドが描かれた。コミックスの巻数で例えると2巻分ぐらい続いてたはず。でも何故こういう展開になったのか?これについて最終24巻のあとがきで作者・ミウラタダヒロは語ってる。
「構想の段階では、様々なアイディアやいくつものルートが存在します。(中略)確定すれば、矛盾するアイディアやルートは消さざるを得なくなります。でも連載を続けるうちに、そうした可能性をただ消すことが寂しくなったのです」とのこと。
どの漫画家さんでも「思いついたアイデアは全てカタチにしたい」という欲求は誰しも持ってるのかも知れない。
ただ修学旅行編で宮崎千紗希が既に予知夢を体験してる。正直、二番煎じ。また少年ジャンプでは『ぼくたちは勉強ができない』も終盤の展開がマルチエンディングという手法でした。『ニセコイ』というトラウマがあるとは言え、同時期に何番煎じもいいところ。
だから作者的には理想の終わり方だったのかも知れませんが、『ゆらぎ荘の幽奈さん』の最後はダレ気味だったことは否めません。2019年2020年頃は掲載順位後半も多かったので、「打ち切りエンド」だったことは否定できないでしょう。
事実、最終24巻のページの半分(100P)以上は描き下ろしのアフターエピソードなどで占められております。
【真のラスト】210話の描き下ろしがヤバすぎた
そこで続いてはその「描き下ろしの特別編」のネタバレ感想をレビューしたいと思います。ゆらぎ荘の幽奈さんは209話で完結してるので、実質的には210話目と表現してもいいのかも。
この210話目の最終エピソードは宮崎千紗希の母親・日和がメインになります。
とある夏休みにゆらぎ荘に娘・千紗希と共にやってくる。そこで信楽こゆずが「大きくなる秘訣」を日和に教えてもらう…という内容。大きくする方法とは「アロママッサージオイル」。やはりモミモミすると良いらしい。
ただ霊媒体質全開の冬空コガラシは「アロマオイル」になってしまう。これまでも『ゆらぎ荘の幽奈さん』では衣服などにコガラシが憑依するパターンがありましたが、そのオイルバージョン。
じゃあ一体どういった展開が起きるのかと言うと、「まさに」といった展開しか起きません。ほぼやってる行為は「エーのブイ」でやってるプレイ。言葉にするのもはばかられるほど組んず解れつ。
もはや少年マンガ誌の域を超えており、読者を完全にシコらせにきてる。良くも悪くも、これまで描かれてきた「それ」と変わりません。だから最後の最後でコレを持ってくるのは「作者わかってるやん感」がすごい。
ぜひフルカラー版コミックスで読みたかったですが、多分15巻以降の新しいフルカラー版のゆらぎ荘の幽奈さんはもう発売されないでしょう。でもクラウドファンディングで制作費を募集してみるのも一つの手か(笑)
キャラクターの「その後」とは?
他にも最終24巻では新たに収録されてる描き下ろしページがあります。それが「最終回後のキャラクターのその後の人生」というエピローグ的な内容になります。
例えば、湯ノ花幽奈は「幽霊若女将」となるものの新たな下宿人が現れなかった。そこでゆらぎ荘は「温泉宿・ゆらぎ庵」に再び経営手法を変え、湯ノ花幽奈はそこの若女将として切り盛りを始める。
一方、冬空コガラシも最終的にゆらぎ庵の経営者となり、最後は死ぬまで幽奈と添い遂げたそう。逆に言うと、コガラシの恋愛が成就してしまったがため、他のキャラクターはゆらぎ荘を出てそれぞれの人生を結果的に歩まざるを得なくなったというオチ。
例えば、宮崎千紗希は難関大学に合格して上京するものの、かつて未来予測で体験した思い出が残っていた。そのため日本を飛び出て海外留学し、その後は外国の外資系企業に就職した模様。
他にも雨野狭霧は誅魔忍として活躍し、雨野雲雀は誅魔忍の幼稚園の先生に就職、緋扇かるらは最後に自暴自棄となったものの、信頼できる部下を思って魔王になった模様。合計20名以上のキャラのその後が描かれてるんですが、全部のネタバレは多いので割愛。
ショートストーリーという設定を取ってるので、基本的に「言葉による解説」が大半を占めます。
最終回の巻末コメントまとめ
そして最後は最終回時に掲載された「作者たちの巻末コメント」をチェックして終わりたいと思います。
まずは作者・ミウラタダヒロの巻末コメント。「毎週楽しい連載でした。応援して下さった皆様ありがとうございましたー」とのこと。きっと少年読者も胸も股間もドキドキさせながら読んでいたに違いない。
『約束のネバーランド』の白井カイウは「ネーム中常にゆらぎ荘に癒やされてました。ミウラ先生4年間お疲れ様でした」とのこと。いろんな意味で癒やされていた違いない。
ちなみに、この翌週号に約ネバも完結してます。
『ぼくたちは勉強ができない』の筒井大志は「ミウラ先生ゆらぎ荘連載お疲れ様でした!落ち着いたらご飯とか行きましょう」とのこと。漫画の内容が内容だけに、公私ともに仲良くされている模様です。
その翌週号では『呪術廻戦』の芥見下々が「ミウラ先生、白井先生、出水先生完結おめでとうございます!芥見はもうダメです」とのこと。確かに人気と共に仕事量は増えてそう。
ちなみにゆらぎ荘の最終回について一切言及してないんですが、『アクタージュ』の原作者・マツキタツヤが「毎日SUUMOで引越し先を探してます」とコメントしてる。でも、同作者はここから2ヶ月後に強制わいせつ罪で逮捕されてる。
「おまえ物件探ししながら、他にも何を物色してくれてんねん」と作画の人はきっと思ったに違いない。少年ジャンプの巻末コメントは「女子高生と遊びたい」とか犯罪フラグをおっ立てる場所ではないんですよと言いたい。
○コミックス最終24巻では新たな作者コメントも
あとゆらぎ荘の幽奈さん最終24巻ではイラスト付きのコメントも新たに掲載されてます。成年コミックでもよく見られる光景ですが、筒井大志や山本亮平、きただりょうま、四谷啓太郎、伊藤いーと等がお祝いコメントを出してます。
例えば、『食戟のソーマ』の作画・佐伯俊もお祝いコメントを出してます。意外にもミウラタダヒロの方が師匠らしい。画像は緋扇かるらですが、首から下には何が描かれてるかは察してください。みなさん空気を読んで実用性がありそうなカットを描かれてらっしゃいます。
ただ考えてみると食戟のソーマもオチの締め方が失敗した典型というか、最後は露骨に打ち切り気味でした。やはり人気絶頂のまま完結できる漫画は少ない模様。
【ゆらぎ荘の幽奈さん】最終24巻評価評判まとめ
以上、『ゆらぎ荘の幽奈さん』の最終回・最終話のネタバレ感想でした。
『ゆらぎ荘の幽奈さん』のラストはやや複雑で分かりづらい結末でした。もっとシンプルなオチでも良かった気がします。一応整合性は取れてる最終回ではあるんでしょうが、理解するのも解説するのも時間がそれなりにかかりました。
ただ『ゆらぎ荘の幽奈さん』がどういう漫画だったかを最後に一言でまとめると、総じてレベルが高い漫画でした。お色気優先のコメディー漫画でしたが、派手なバトル描写なども描かれてるので「意外としっかり面白い少年漫画」でした。
「高い画力」がベースにあるので、何を描いてもそれなりに様になってる点がおすすめ。最後こそ「作者の欲」が出すぎた感は否めませんが、ストーリーの面でもホロリと来る展開なども要所要所であるので一応最後まで飽きずに読めそう。
もちろん女子キャラクターも可愛いので「実用性」は極めて高い。お手軽にオカズ目的の漫画を読みたいなら、とりあえずゆらぎ荘の幽奈さんを買っておけば損はしないはず。基本的に「読者ファースト」の漫画だった気がします。
2010年以降の少年ジャンプでA級ナンバーワンが鬼滅の刃としたら、B級ナンバーワンはゆらぎ荘の幽奈さんだったかも知れない。最近の少年ジャンプを見る限り、作者・ミウラタダヒロの再登板の日は近いかも知れない。