『からくりサーカス』全43巻のネタバレ感想をレビュー。掲載誌は少年サンデー。出版社は小学館。ジャンルは少年コミックのバトル漫画。作者は藤田和日郎(ふじた・かずひろ)。日本大学出身と意外と高学歴らしい。高学歴漫画家の出身大学一覧なども参照。
『からくりサーカス』は1997年に連載が開始した割と古いコミック(2006年完結)なんですが、2018年10月からはアニメ化が開始。そこで今回ドル漫では複雑な設定の原作漫画なので内容を徹底的に解説しつつ、『からくりサーカス』は面白いかつまらないか考察してみました。
ちなみに、記事後半には最終回やラストの結末もネタバレしてるので注意。またあくまで漫画版しか読んでないので、アニメ版『からくりサーカス』の結末がどうなるかは分かってないのであしからず。
あらすじ内容ストーリー舞台まとめ
『からくりサーカス』の主人公を確認しておくと、合計3名。W主人公の漫画は少なくないですが、トリプル主人公の漫画は珍しいはず。
まず一人目の主人公は「才賀勝(さいが・まさる)」。小学5年生。だから見た目さながら、戦闘力は皆無で非常に弱々しい。ただし、非常に正義感が強く、信念も強い。声優CVは植田千尋。
才賀勝はもともとお金持ちの御曹司だったが、父親・才賀貞義が亡くなったため莫大な遺産を相続。しかし、この莫大な遺産を狙う謎の勢力によって、才賀勝は命を狙われるハメになった。
そこで才賀勝は養祖父・才賀正二の言葉を思い出す。「もし大人になる前にお父さんがいなくなれば、このカバンを持ってお逃げ。【しろがね】がおまえを守ってくれる」。
この【しろがね】こそが2人目の主人公にあたる「才賀エレオノール」。才賀正二の娘であり、笑顔が苦手なクールビューティのサーカス団員。声優は林原めぐみ。舞台は飯田里穂が演じたそう。
さながらヒロインと言ってもいい主人公ですが、エレオノールは才賀正二の命令に従って才賀勝をことあるごとに守ってくれる人形使い。
例のカバンには「あるるかん」と呼ばれる非常に戦闘力が高い操り人形(自動人形・オートマータ)が入っており、エレオノールはそれを駆使して戦う。だから可憐な女子高生風に見えても、実はめっちゃ強い。
最後のキャラクターは「加藤鳴海(かとう・なるみ)」。声優は小山力也。幼少期の影響で中国拳法をマスターし、ケンカはめっぽう強い単細胞。加藤鳴海の年齢は、こう見えて10代後半。
しかし、ある日加藤鳴海は他人を笑わせないと死んでしまう病気「ゾナハ病」に罹患してしまう。そんな最中に出会ったのが、謎の敵の魔の手から逃れる才賀勝。そこで加藤鳴海は才賀勝を守ろうと奮闘し、まさに兄貴分的な存在。
この3名のキャラクターが出会った場面から、『からくりサーカス』のストーリーが始まります。
果たして、才賀勝の命を狙う勢力とは何者なのか?加藤鳴海のゾナハ病は根治するのか?エレオノールが笑顔になる日は来るのか?
『からくりサーカス』は全43巻のボリューム。そのためストーリーは「勝編」「サーカス編」「からくり編」「からくりサーカス編」「機械仕掛けの神編(デウス・エクス・マキナ)」などのシリーズに分かれております。
ラスボス白金とそれぞれのキャラクター相関図
ただ『からくりサーカス』のストーリーの根幹は「200年前の中国」にまで舞台はさかのぼります。実は前述のキャラクターは、かつて中国に「白銀(ぱい・いん)」と「白金(ぱい・じん)」という二人の兄弟の命運や人生を継承してる。
この白兄弟は「人形使い」の家庭に生まれた青年。弟・白金はどこか頼りなく、いつも兄・白銀を尊敬し、常に目標でもあった。ただ人形使いとして日々研鑽を重ねる内に、二人は「人形に命を与えたい」と次第に思うようになる。
そこで白兄弟は「錬金術」を学ぶためにプラハを目指す。だから厳密な舞台は中国ではありません…。
このプラハで二人は「フランシーヌ」という貧しいリンゴ売りの少女と運命の出会いを果たす。このフランシーヌこそが後のエレオノール。
フランシーヌは貧しいながらも笑顔が絶えず、いつしか弟の白金は恋に落ちていた。しかし、それは兄・白銀も同様だった。しかも、フランシーヌは兄・白銀に惚れていた。そして、フランシーヌと兄・白銀は結婚を誓い合う仲に発展する。
ただ、弟・白金が納得するはずがなかった。そして、二人が愛し合う光景を目の当たりにし、「あんなに幸せそうなフランシーヌを見ることになるなら、僕はもう笑わない」と憎悪の炎を燃やす。
最愛のフランシーヌに奪われたこと以上に、やはり尊敬していた兄・白銀だったからこそショックは大きく、弟・白金は裏切られた思いを強める。そして、暗黒面に陥った弟・白金はフランシーヌを強引に連れ出して暴力で支配。
しかし9年が経過した後も、白金は愛されることはなくフランシーヌは最後は自死を選択。全ては数百年前に起きた兄弟の悲恋や執念が綿々と続いており、これを軸に『からくりサーカス』の物語が展開してる。
つまり、端的にまとめると「白金がラスボス」と考えて構いません。
また弟・白金の記憶や人生は「才賀勝」、兄・白銀は「加藤鳴海」、フランシーヌは「エレオノール」に継承され、またそれぞれの現在の立場にも深く呼応しあってる相関関係と解釈すると複雑なストーリー設定が分かりやすくなります。
「しろがね」の正体とは?
続いては、「しろがね」の正体をおさらい。前述のように「しろがね」はエレオノール自身を指す通称でもありますが、意外と意味合いは多岐に渡るためやはりややこしい。
しろがねとは「生命の水」を飲んで、ほぼ不死身の肉体を手に入れた人間の総称のことも意味します。具体的には、しろがねは5年に1歳しか年を取らない。エレオノールを育て上げたギイ・グリストフ・レッシュなど、しろがねに該当するキャラは複数存在します。
一方、ラスボス・白金が生命の水と死亡したフランシーヌの髪の毛を使って作ったのが「フランシーヌ人形」。ただ、あくまで人形は人形。そのため本物のフランシーヌのように笑うことはできなかった。
そこで、ラスボス・白金はフランシーヌ人形を笑わせるために「ゾナハ病」を開発。そして、「真夜中のサーカス」という自動人形のみで構成されるからくり集団を立ち上げ、世界中に旅をしながら同時にゾナハ病をばら撒いた。
この「真夜中のサーカス」を仕切っているボスがフェイスレスと呼ばれる男。あらゆる人間に変装できるため、まさに「顔なし」。そして、あらゆる自動人形も破壊・再生できるんですが、このフェイスレスの正体も実は白金が演じてる。
一方、しろがねは自動人形(オートマータ)を操り、敵の自動人形を破壊する役割を担う。そのため「人形破壊者」という異名も併せ持つんですが、実はこの宿命をしろがねに負わせたのもやはり白金。
つまり、「敵」の勢力をゾナハ病を撒き散らす機械仕掛けのからくりサーカス団とすると、「しろがね」とはそのゾナハ病を食い止める不死身の人間の勢力と考えると内容が分かりやすくなるはず。
【壮絶な執念】白金の目的が気持ち悪いが切なく泣ける
だから『からくりサーカス』のストーリーをざっくりまとめると「白金の全部壮大な自作自演」という内容だと分かります。
何故なら、ゾナハ病を作って蔓延させたのも白金であれば、まよなかのサーカスを作ったのも白金。このボス・フェイスレスも白金。そして、フェイスレスを倒すように「しろがね」に仕向けたのも白金。でも、何故わざわざ白金はこんなことを企むのか?
結論から書くと、白金の目的は「最愛のフランシーヌの生まれ変わりのエレオノールと添い遂げる」ため。
白金は「柔らかい石」など錬金術を駆使することで、他人の身体に自身の記憶を移動させて、いわば憑依することで何百年も生き続けることに成功。そこで、白金は別人格としてフランシーヌの生まれ変わりと恋仲になろうと試みる。
そのため『からくりサーカス』のラスボス・白金は悪役を演じる一方、正義のヒーローを演じることでフランシーヌの生まれ変わりに自分自身を惚れさせようとした。この一人の女性のためだけの執念が、とにかく吐気がするほどエゲツナイ。
しかしながら、いつも白金計画は破綻してしまう。例えば、100年以上前に存在したフランシーヌの生まれ変わりのアンジェリーナは、成瀬正二郎(後の才賀正二であり、主人公・才賀勝の養祖父)に奪われてしまった。かつて兄・白銀に医学教わった弟子的な存在であり、共にあるるかんを作った男。
○エレオノールに守られる「才賀勝」に憑依するのが目的
でも200年後、冒頭で紹介した「才賀勝」が重要な鍵を握る。あらすじで才賀勝は義父・才賀貞義が亡くなって莫大な遺産を相続したと書きましたが…
実は義父である「才賀貞義」こそが白金だった。
他にもディーン・メーストルやフェイスレスなどになりすましており、まさに白金は変装の名人。そのため白金こと才賀貞義は才賀勝の養祖父・才賀正二になりすまして、幼き頃のエレオノールを徹底的に洗脳した。
どういった洗脳か?
「エレオノールは意志を持たない人形。でも才賀勝を守れば人間になれる」という洗脳。この白金の影響でエレオノールは笑顔を失い、「才賀勝を守らなければいけない」と自身に宿命をかすようになった。
一方、やはり養祖父・才賀正二になりすまして、才賀勝には「エレオノールの助けを借りるよう」に仕向ける。だから、前述のあらすじ画像の養祖父・才賀正二は、ラスボス・白金が最初から描かれていた形。
何故ならフェイスレスに命が狙われば、お互いを守り合うために二人は絆を徐々に深まっていく。この最中に白金が最終的に才賀勝に憑依すれば、今度は絶対に失敗しない関係性をエレオノール(フランシーヌの生まれ変わり)と添い遂げることができると考えた。
まさにラスボス・白金は「フェイスレス」という悪役を演じて、一方では「才賀勝」という正義のヒーローを演じようとした。つまり、「すべて白金の手のひらの上」で何もかもが転がされていた。
『からくりサーカス』のストーリーは、まさに一人のモテない男の壮大な自作自演。たった一人の女性に愛されたいがための、過去から未来へと連綿と何百年も繋がっていく執念と歪んだ恋が、この『からくりサーカス』の根幹に描かれてる。
まさに少年誌ファッキューのキモオタ全開の男がラスボス。
キャラクターの関係性・相関図が複雑
ただこれまでの解説を読んでも分かるように、反面として『からくりサーカス』のキャラクターの関係性や相関図がかなり複雑です。しろがね自体も年を取らずに何百年も生き続けるため、実はアイツはコイツだった…みたいな演出が多い。
例えば、Wikipediaの登場人物のページを読むと相関図が視覚的にまとめてくれてましたが、白金が片思いしてたフランシーヌだけでもこれだけの繋がりがある。正直、当時の小学生読者とか付いていけてたの?と思わず訊きたくなるレベル。
しかもストーリーの時間軸は現在から過去、その過去から更に過去といった具合に時代もアチコチに飛び回る。それこそが藤田和日郎作品の醍醐味・真骨頂と言えますが、作者が必死こいて考えた内容を読者が一瞬で理解するのはほぼ不可能に近い。
ただ『からくりサーカス』の全体像をざっくりまとめると、何度も解説してるように「主要人物は3名」で内容が構成されてると割り切って読むと分かりやすい。
みんなが厳密には同一人物ではないものの、からくりサーカスの相関図は「才賀勝↔白金(才賀貞義・フェイスレス)」を中心として、「加藤鳴海↔白銀(才賀正二)」「エレオノール↔フランシーヌ(アンジェリーナ)」の3つの軸で成立してる感じです。
死亡後の兄・白銀は才賀勝の養祖父・才賀正二に継承され、アンジェリーナと結婚して生まれたのがエレオノール。この才賀正二の人生を継承してるのが加藤鳴海であり、アンジェリーナはエレオノール。
まさに兄・白銀はフランシーヌと恋仲になる運命であり、その星の下に生まれたと言っても過言ではない。逆に、弟・白金はどうやってもフランシーヌと失恋する運命にある。まさに残酷なDNA。
つまり今回の白金の計画も頓挫する未来しか見えてこない。
【感動】熱い泣かせる名言・名場面もおすすめ!
続いてはストーリー内容の解説以外にも、『からくりサーカス』の面白いおすすめポイントを考察しておくと、「名言」がとにかく熱い。
例えば、主人公・才賀勝だと「なんでみんな幸せになれないのさあ?」「幸せが似合わない人なんて、いない」というセリフは、勝の人間性がもろに現れている名場面。
『からくりサーカス』のストーリーは周りくどいほどの複雑ですが、逆にセリフは至ってストレートすぎるぐらいストレート。「夢はいつか必ず叶う」などグッと来る名言が多い。
逆に、ラスボス・白金のネガティブなセリフもストレートなまでに陰鬱で鬱屈してる。その強がりめいた言葉も変に胸に刺さるというか、虚しく悲しくさせてくれる。
○「あるるかん」など自動人形を使ったバトルは面白い?
『うしおととら』や『月光条例』でも言えますが、今回の『からくりサーカス』もアクション描写は多い。
特にあるるかんといった「からくり人形(懸糸傀儡)」を操って戦う様は、まさに能力系バトルものさながら。『からくりサーカス』という漫画タイトル通り、要所要所でアクション満載のバトル描写が描かれてて少年マンガ的な面白さがあります。
ただし、『からくりサーカス』はやはりストーリーがメインの漫画。
そのため画像からは「いかにも必殺技満載」の展開を一瞬期待してしまうものの、結果的にはフツー。良く悪くも「上手な普通のアクション」の域止まり。少年ジャンプレベルを期待すると不発。
バトル漫画的には「自動人形」という設定が抜群だっただけに、個人的にはもう少し活かせなかったものか…という感想。あるるかんなど自動人形も、「ストーリーの一部」として存在してる意味合いが強い。
最終回の結末はどうなった?【最終話ラスト】
最後は『からくりサーカス』の最終回のネタバレ感想をレビューしようと思います。ラストの結末を知りたくない方は離脱推奨。責任は取りません。
ということで、『からくりサーカス』の最終局面を解説。
人類は滅亡寸前の中、ゾナハ病の止め方をフェイスレスに聞き出すため、宇宙ステーションに向かう。そして、ここで才賀勝と加藤鳴海はようやく再会。しかし、才賀勝は自らを「えんとつそうじ」という人形破壊者と嘘を付き、加藤鳴海を地上に置いてフェイスレスが乗るスペースシャトルに乗り込む。
何故なら、エレオノールと一緒になるべき存在は加藤鳴海しかいないと考えたから。
そして、加藤鳴海はエレオノールに「オレはおまえに会うためにここへ来たんだ。しろがね、おまえを愛していた」と才賀勝の気持ちに応えるように告白し、ようやく二人は結ばれる。ここでエレオノールは初めて嬉し涙を流し、人間としての感情を取り戻す。
この最終巻ではマサルとナルミが二人が背中合わせで戦う場面も名シーンだったと評価できでそうです。才賀勝は最後まで実直なキャラクターだからこそ、全員が幸せになる方法を選択できた。
○【完結】才賀勝 vs 白金・フェイスレス ラストの結末が泣ける
一方、才賀勝はフェイスレスこと白金と対峙。ただ白金は「なんでエレオノールをナルミにゆずった?マサル」と揺さぶりをかける。何故なら、白金の意志を受け継ぐ才賀勝も、当然エレオノールを愛していたから。
そこで才賀勝は涙ながらに答える。「だってしろがねを最初に好きになったのは、ナルミ兄ちゃんなんだもん」。一方、白金はかつて「僕が最初に好きになった」と兄・白銀を迫っていた過去を思い出す。
おそらく、どっちが最初に好きになったかは誰も分からない。それでも何故ここまでの違いが生まれるかと言うと、それぞれの考え方や性格の違い。最終的に好きな女性(エレオノールやフランシーヌ)の気持ちをどれだけ汲み取れたか、また譲れる気持ちが強かったかの違い。
次第に揺れていく白金の元に、偽フランシーヌ人形の一つに潜り込んでいたディアマンティーナが登場。そして、「フェイスレス様の恋人だと言ってくださいよ。エレオノールよりも愛してるって」と要求。
ただ白金はディアマンティーナの言動に「自らの過去」を重ね合わせていた。そして、白金は過去の過ちにようやく客観視することができ、自らを諭すようにディアマンティーナを分解する。
「愛される方にも都合ってもんがあってさ、愛されたからって、そのヒトを一番に愛するとは限らないんだよ。僕が別のヒトを愛する自由だってあるんだよーん」。
○【からくりサーカス最終回】弟を助けるのが兄だもんなァ
しかし、哀れなディアマンティーナが道連れとばかりに死に際に爆弾を起動させ、スペースシャトルは半壊。今にも落下しそうだったが、才賀勝と白金はタッグを組んでスペースシャトルの修復にあたる。
この二人の助け合う姿はかつて白銀・白金兄弟が若かりし頃の「それ」だった。白金は幼き才賀勝を助ける今の不思議な心境を、当時の兄・白銀の気持ちにダブらせたことで改めて気付かされる。
「弟を助けるのが、兄だもんなァ」。
そして、自らの過ちとようやく向き合えた白金はゾナハ病の治し方を才賀勝に教え、グリュポンと共に孤独のまま死亡。しかし、自らの意志を受け継ぐ才賀勝を助けたことで、白金の心は結果的に最後に救われたのかも知れない。
序盤で才賀勝と加藤鳴海との友情を醸成してたことも手伝って、『からくりサーカス』の最終話はストーカー万歳の「失恋DNA」の負の連鎖を引きちぎれた名場面と言えるでしょう。
だから、最後のラストは主人公・才賀勝は白金のDNAを引き継ぎ、加藤鳴海は白銀のDNAをそれぞれ引き継いだものの、それぞれが過去の呪縛を解き放ってハッピーエンドの結末を迎えます。
ちなみに加藤鳴海の「失った左腕」ですが、どうやら才賀勝が冷凍保存していたため、最終的には復活します。この左腕を使って加藤鳴海は、エレオノールをギュッと抱きしめる仕草も最後では見られます。
【感想】からくりサーカス 総合評価・評判・口コミまとめ
以上、ドル漫による『からくりサーカス 全47巻』のネタバレ感想でした。
最後の最後まで打ち切りにならず、ここまでの大作をまとめ上げたもんだと感心します。そのためクオリティーだけで評価すれば、『からくりサーカス』は名作漫画の部類に入りそう。ここまで惨めで悲しいラスボス・フェイスレスは存在しない。
未だにニュースを騒がす大きな凶行に走った犯人も、きっと似たような人生を歩んできた哀れな男と想像され、だからこそ白金・フェイスレスを嫌いになれない読者もいそう。
ラストの最終話で「僕が間違っていたよ。銀兄さん」とポツリとつぶやく白金の何とも言えない表情に、思わず胸がギュッと締め付けられる。
最後の最後まで舌を出しておどける表情を見せるなど、素直になれない白金の歪んだ性格に涙が出てくる。おそらく自らの過ちに気付いた白金の本音を代弁すれば、最後は才賀勝と地球に戻りたかったのかも知れない。
まさに「誰からも愛されない男の悲哀」が描かれてるマンガ。
○内容は濃密で面白いが、基本的にストーリーは長い
ただし、さすがにストーリーが長ったらしい。最後まで読めないまま『からくりサーカス』を途中で挫折した読者も多いでしょう。もしかすると少年ジャンプだったら10巻も経たない内に打ち切りコースかも。
やはり設定が壮大に作りこまれてるが故に、展開が進みそうで進まない。そのため正直、全体的にテンポ感に欠ける。「うわ…まだ続くの?」と読んでる内に気持ちが冷めた部分がなかったと言えばウソになります。
既に30巻台半ばぐらいで、白金や白銀の過去などの『からくりサーカス』の根幹に関わる設定は出尽くしてた。そのためそれ以降の10巻分ぐらいはやや蛇足感もあり、回りくどい展開にグズグズ感は否めない。
例えば、前述のように加藤鳴海が才賀勝の正体を知らないまま、お互い背中合わせで阿吽の呼吸で戦うシーンは名場面そのものですが、実は二人が5巻前後で別れた以降からこの最終43巻のまさに最後の最後まで出会わない。
あらすじでは何シリーズか存在すると解説しましたが、からくりサーカスは全43巻に「一つのエピソード」がまるまる収録されてると言っていい。例えば『ワンピース』もかなり長期連載漫画ですが、一つ一つのエピソードは長くて10巻程度に収まってる。
そのため『からくりサーカス』でも要所要所で大きな区切りが欲しかったか。だから最後の最後完結するまで読まないと、『からくりサーカス』の読後感や充足感が得られにくいのは難。さすがにオチを勿体つけすぎか。
だからまたイチから読み直したいかと思うと、ちょっと躊躇しちゃうボリューム感であることは否めない。もっと内容がコンパクトにまとまってたら、『からくりサーカス』は誰にもおすすめできる感動漫画だった気がする。
そのため『からくりサーカス』は良くも悪くも「手軽には読めない名作漫画」とドル漫では評価してみる。
コメント
しろがねの声優は林原めぐみさんです!記載されてるのは舞台の方ですね。
楽しく読ませて頂きました。
ただ少しだけ気になることが書かれていたのでコメントさせて貰います。
エレオノールの紹介で出てくる「あるるかん」はオートマータではなく懸糸傀儡ですよ。
オートマータですと白金が造った自分で考える人形になるので出来れば訂正お願いします。
『フランシーヌの生まれ変わりのアンジェリーナは、成瀬正二郎(後の才賀正二であり、兄・白銀の生まれ変わり)に奪われてしまった。』
って上記で書かかれてますが、正二は兄・白銀の生まれ変わりじゃないです。縁あって兄・白銀に医学教わっただけで、2人の関係は師匠と弟子。同じ時代に生きていてるため生まれ変わりではありません。
いろいろ情報を修正しときましたm(_ _)m
「伸びきった糸(たるんでる糸)でどうやって動くんだろう?」とか「そんな糸で動かす人形が強いって無理ありすぎぃ」って、そっちばかりが気になってしまって、いまいち入りきれなかった作品でした(途中離脱)※ただの個人の感想です
楽しく拝読いたしました。
私の中では未だに圧倒的に名作第一位なのですが、確かに少し冗長の印象は拭えませんよね。
黒賀村関係をもう少し削っても良かったと思いますが、アニメはありゃ削りすぎて駄目です。
〉「夢はいつか必ず叶う」などグッと来る名言が多い。
グッときちゃだめ!w
久しぶりに一巻から読みましたが、やっぱり長いですよね・・・
アニメのしろがねの声優さんの声、あれぐらいかわいくなくても・・・w(もう少し低い方がよかった。個人的に。)
上の方もおっしゃってますが、あるるかんを始めしろがね達が操る人形は自動人形・オートマータではなく懸糸傀儡です。
また才賀正二と一緒になったアンジェリーナは血縁関係(又姪)なだけでフランシーヌの生まれ変わりではありません。