グッドアフタヌーンで連載されていた漫画が『亜人』。コミックス累計発行部数は1000万部に迫る人気漫画。亜人と呼ばれる「不死の人間」を中心に、死ねないからこそフルスロットルで殺し合うバトル描写が圧巻でした。
ただ『亜人』は2021年2月をもって完結しました。足掛け9年ほどの連載を終えて、コミックス最終17巻も2021年5月に発売されました。
そこで今回ドル漫では「亜人の最終回・最終話のネタバレ感想」を画像付きで徹底的にレビューしてみました。果たしてラスボス・佐藤の最後はどうなったのか?最強の亜人・佐藤は死亡したのか?
最終フェーズで自衛隊入間基地を襲撃
まずは「最終回までのあらすじ内容」を簡単に解説します。
これまで佐藤は数々のテロを実行してきた。この佐藤を食い止めるために、同じく亜人の主人公・永井圭などは国の厚労省などと手を組む。そして、佐藤の計画の「最終フェーズ」がいよいよ実行される。田中を囮に佐藤が向かった先は「航空自衛隊入間基地」。
そこで狙うは「戦闘機」。
基地祭りで総理大臣たちも集まる中、佐藤は堂々と入間基地に乗り込んで武器を手にする。ただ佐藤が武器を持っていく必要はない。何故なら「そこ」に大量にあるから。佐藤も「ガチでいくよ」とかつてのベトナム戦争時よりも緊張感がみなぎる。
まさに不死身の肉体を持つ佐藤は無双。実戦経験が皆無の自衛官たちに、無敵の佐藤を止められる者は皆無だった。IBMとタッグに「佐藤の死」以上に、自衛官の死体の山が築かれていく。
航空機で国会議事堂を襲撃
その後、永井圭たちが入間基地に集まってくるものの為す術なし。佐藤が集めたモブ亜人たちが一般市民に潜り込んで、さながら便衣兵として自衛官を次々と排除していく。多勢に無勢という言葉を嘲笑うように、完全に佐藤優位の展開が続く。
そして、佐藤のヤバすぎる計画が更に進行する。
それが入間基地に大量に並ぶ戦闘機を用いて、そのまま国会議事堂にズドーンと突っ込むという最強かつ最凶の荒業を展開する。
佐藤は死んでも生き返るんですが、基本的に死んだその場で復活してしまう。そのため佐藤は「腕の一部」を入間基地に残しておく。そうすれば国会議事堂に突っ込んだ後、自動的に佐藤は再び入間基地に戻ることが出来る。
佐藤はひたすらに「これ」を繰り返す。日本全土で戦闘機の雨あられ。かつて航空機を丸ごと垂直落下させたアレを何度も繰り返す。
でも逆に言うと、佐藤の腕を発見してそれを地中などに閉じ込めておけば、次に戦闘機テロを起こした後、佐藤を自動的に「封印する」ことができる。しかしながら周囲に都合よく、佐藤の腕をみっちり封じ込める場所はなかったが…
そこで永井たちが選んだ場所が「電柱の中」。電柱は全部がコンクリートの塊と勘違いしがちですが、実は電柱の中身は空洞。そこに佐藤の腕を突っ込んだ。まさに【勝確】の展開だった。
最後に飽きちゃった佐藤さん
でも佐藤は佐藤だった。まさかの自分が立案指揮してきた最終フェーズに佐藤が「飽きてしまう」。確かに戦闘機で突っ込んで、という繰り返しの作業は単調。佐藤にはそもそも大義名分や信念はない。この退屈な最終フェーズを続ける理由はなかった。
ただ佐藤は戦闘機で再び入間基地に舞い戻る。理由は「同じ亜人の永井圭にお礼を言いたかった」から。佐藤にとって亜人との戦いは初めて。もともとはただの高校生だった永井に戦闘経験はないものの、頭が回るからこそ佐藤を追い詰めることもできた。
それに対して、「こんなにも新鮮な気持ちで戦えるなんて知らなかった。ありがとう。永井くん」と佐藤は嬉しそうに語る。そして、佐藤は海外に高跳びすることを告げる。
理由はシンプル。「世界のTVゲームシーンを日本が牽引してる時代ではなくなった」から。
思えば本名サミュエル・T・オーウェンこと佐藤が日本にやってきた理由も、日本のゲームが面白かったからでした。でも今やAPEXといったFPSゲームは海外のゲーム会社が開発。日本のゲーム会社が作れるものと言えば、モンストやパズドラ、ウマ娘といった単調なソシャゲーばかり。
もはや佐藤がゲーム後進国とも言える日本にいる理由はどこにもなかった。
しかしこの直後、海斗がバイクを乗って佐藤を襲撃するも返り討ちにあう。この姿を見て、永井圭は感情が高ぶって大量のフラッドを放出。全部は全部説明しませんが何やかんやがあって佐藤は逃亡し、何度目かの永井圭と一対一の構図になります。
最終回で佐藤は死んだのか?
だから『亜人』の最終回で一番気になる点が「佐藤の行方」。果たして最終的に佐藤は死んだのか?はたまた佐藤が逃げおおせたバッドエンドだったのか?
永井はIBMを形成できないほど疲労困憊に追い込まれる。一切の武器を持たない永井に妙案はなかったが、かつて中野功と二人で逃亡していた時が頭をよぎる。その際に「飛び込みを誤ると【気絶】するから亜人にとっては危険」と永井は中野に教えていた自身の発言を思い出す。
亜人が水中で気絶したら身動きが取れなくなる。つまりは捕縛される可能性が高い。
そこで永井は思い切って佐藤に体当りして、水中に飛び込もうと試みる。佐藤は一瞬たじろぐ。永井の真意を図りかねるものの、これまでの楽しい戦いを思い出して「何がしたいか知らないけど、これが最後の勝負だ永井くん!」と諸手を挙げて受け入れる。
○佐藤は気絶して最強の棺桶に封じ込められる
二人の対決は最後どうなったのか?
永井の博打が結果的に勝利する。佐藤は頭の打ちどころが悪く気絶してしまう。運命の女神は永井の微笑んだ。水中で佐藤のIBMを通して「いやぁ楽しかったね」という、佐藤の声が聞こえたような気がした永井。
それに一瞬同調する永井でしたが、佐藤の蛮行でこれまで数千人単位の人間が死亡してる。みんな本気で生きてきた人間ばかり。それをゲームと称して簡単に命を奪っていいものではない。
永井は「みんな本気で生きてんだ。フザケてんじゃねぇよ」と気絶する佐藤に吐き捨てるように語る。
その後、自衛隊に捕縛された佐藤は「特殊な棺桶」に封じ込められる。一切の身動きが取れないだけではなく、常に麻酔を打ち続けられる。まさに何もできない状態を半永久的に強いられる。佐藤は結果的に死亡してないものの、社会的な死を最期に強いられる。
○新たに「その後の人生」を歩む亜人たち
ただし、棺桶の耐久期間は200年。半永久的に死ぬことがない亜人にとって、その期間は短いのか長いのか。それは言うまでもなさそう。それでも今生きている人間が佐藤の脅威に再び遭遇することはないはず。
その後、田中と下村泉といった亜人は別の名前を与えられて、新しい人生を歩んでいく。これは戸崎の最後の図らい。田中は「てめぇにだけは借りを作らねぇ」と豪語してましたが、最後は下村の元にお世話になっている模様。
秋山も同様に日常生活を取り戻し、オグラ博士は再びアメリカの研究機関に戻る。海斗は少年院から出院することが決定。海斗は亜人ではなかった模様ですが、最終的に生き延びた理由は永井が助けてくれたから。
一方、永井も別の名前を与えられて、律や慧理子といった家族とは別々で暮らすハメになる。妹は相変わらず心配するものの、母親はどこ吹く風。それは永井圭も同じだった。中野との最後の別れの際に語った夢からも分かる。
永井の夢とは「医者になる」こと。離れ離れになっても、永井は未だに妹のことを忘れてないことが分かります。最終回のラストでは永井に【唐突な災難】が訪れるんですが、それでも永井は前に向いて進んでいく…という場面で完結します。
コミックス最終巻の表紙の意味とは?
続いては「コミックス最終巻の表紙」の謎を考察。謎というと大げさですが、これまでの『亜人』の単行本表紙とは違った演出が盛り込まれていました。
コミックス最終17巻の表紙がこちら。真っ白。正確にはIBMの残り香のようなものが描かれていますが、ベース色の白が際立ちます。
一方、これまでの『亜人』の単行本表紙がこちら。最終17巻との差は歴然。それまでのコミックス表紙ではIBMを中心に描かれており、ベース色も毒々しいほどカラフル。でも最終17巻では明らかに意図的に表紙を真っ白に描いてることが分かります。
最近だと『鬼滅の刃』が好例。このコミックス最終巻でも「真っ白をベースにした表紙」が描かれていましたが、これの意味するところは「ラスボスの脅威がこの世から消えた」というハッピーエンドのオチを演出してる表紙だったと分かります。
作者・桜井画門は巻末コメントで最後に何を語った?
ただ巻末コメントで作者は「亜人は見切り発車でスタートした」と述懐してます。そう考えると、どこまで…正確にはどこから意図的に表紙の演出や伏線を描いていたかは定かではありません。
確かに最初は原作者の三浦追儺がいました。でも途中から何故か桜井画門が全てを描くようになったため、「黒い幽霊は亜人が見る幻影と聞いていたので、物理的に闘い出した時は驚いた」と最後の巻末コメントでも他人事のように語ってくれて笑います。
ちなみに二人に面識はなく、何故三浦追儺が降りたのかは桜井画門も分かっていないとか。
亜人の正体とは?
ちなみに「亜人の正体」を考察したいと思います。最終回以前から判明してるんですが、結末にもどうやら関わってくる内容でした。
オグラ博士曰く、亜人の正体は「人間の心」とのこと。人間は素粒子の塊。その素粒子は138億年前の宇宙の誕生(ビッグバン)と共に生まれた物質。素粒子はあらゆる物理法則で決められて動いてる。つまり、人間の誕生も宇宙誕生の瞬間に定められていた。
ただ亜人然り、IBM然り、明らかに宇宙の物理法則とは反する存在。常識的に考えて、有機生命体がここまで何度も蘇生を繰り返すことはない。亜人はこの宇宙全体で見ても存在するはずのない物質の集まり。有機生命体なんちゃらかんちゃらは『進撃の巨人』のユミルをどことなく彷彿。
じゃあ亜人を形成する物質はどこから来たのか?
それがまさに「人間の心」。2億年前に高度な知的機能を備えた脳を持つ哺乳類が誕生した。ここに人間の感情も備わるわけですが、ある日、とある原始人が「愛する人の死を目の前にして強烈な感情」が掻き立てられた。そこで誕生した物質がIBMに違いない。
【完結まとめ】亜人最終回 総合評価・評判レビューまとめ
…というのがオグラ博士の見立てだった。これが事実だったかどうかは『亜人』の作中でも最後の最後まで証明されたわけではありません。
それでも亜人は不死身だからこそ、困難を前にしても何度でも立ち上がる存在であれた。亜人の成り立ちがもし「人の心」だとしたら、不死身の肉体が実は強みではない。この「不屈の精神」こそが亜人の本髄だったというオチでした。
まさに最終回では「永井圭という主人公」で体現されていた。だから、『亜人』の最後の結末は意外と王道的なメッセージが込められた最終回だった気がします。見切り発車とは作者自身の発言ですが、意外にもハッピーエンドで上手くまとまったラストでした。
佐藤を最後とどめを刺してないのでモヤッとさは多少残ります。ただ『鬼滅の刃』の鬼舞辻無惨なんかだと完全に消滅してるので再登場の可能性はゼロですが、逆に言うと『亜人』の続編なんかも今後期待させるオチとも言えます。
『亜人』という漫画は見切り発車で始まったということですが、もし続編があれば計画的にプロットなんかも組み立てられてるのかも知れない。
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