『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の作者は赤坂アカ。掲載誌はヤングジャンプ。連載期間は2015年~2022年。ジャンルはラブコメ漫画。コミックス発行部数は2022年12月時点で2200万部を突破。
ちなみに、『かぐや様は告らせたい』の英語名は「Kaguya-sama: Love Is War」。長ったらしい副題の『天才たちの恋愛頭脳戦』は「愛は戦争」を訳しているように見えますが、1話目から使用されている【恋愛は戦】というセリフを直訳している模様です。
そこで今回ドル漫では『かぐや様は告らせたい』の「最終回・最終話」のネタバレ感想をレビューします。最後に面白い漫画だったのか、つまらなかったのか?またおすすめポイントも考察します。
内容あらすじ・登場人物まとめ
まず『かぐや様は告らせたい』の内容あらすじ・登場人物を解説します。
舞台は「秀知院(しゅうちいん)学園」。かつては貴族を教育する目的で設立された、日本でも有数の名門校。現在は名だたる有名企業や政治家、いわゆる財閥の子息たちが多く通う伝統校だったが、そんなエリート学生をまとめ上げる存在が【生徒会】。
主人公は【四宮かぐや】。
かぐやは生徒会の副会長にして、総資産200兆円を超える大財閥・四宮グループの長女。秀知院学園でも常に成績はトップクラス。音楽や芸事などあらゆる分野でも才覚を発揮するなど、まさに誰もが羨む正真正銘のご令嬢だった。
そして、もう一人の主人公が【白銀御行】。読み方は「しろがね・みゆき」。
白銀御行の家は決して裕福ではなかったが、学年模試では不動の一位を堅持する生徒会長。天才が多く通う秀知院学園において、努力で勝ち上がってきたTHE秀才。性格も至って真面目。一挙手一投足も気品あふれるため、周囲の尊敬を一身に集める眉目秀麗。
○四宮かぐやと白銀御行の「恋」の駆け引き
しかし、四宮かぐやも白銀御行も秀才であるが故に、どちらもプライドが高かった。お互いがお互いに惹かれ合っていることは薄々気付いていたが、恋人間や夫婦間でも明確な上下関係はしばしば存在する。だからこそ、仮に付き合うとしても「最初」が肝心。
つまり、相手に惚れて最初に「告白してしまった方が負け」と双方は考えた。
そこで「先に相手側に告白させよう」と手練手管を使って、双方は頭脳戦と心理戦を企てる。その試みの大半は脳内で処理されて実行されることは少ないものの、副題の「天才たちの恋愛頭脳戦」とは2人の主人公の恋の駆け引きを表しています。
それでも2人の距離感は徐々に近付いていく。次第に「告白してもらいたい」という本音は止められなくなっていく。果たして四宮かぐやと白銀御行は付き合うことができるのか?結果的にどちらが先に告白したのか?…というラブコメ漫画になります。
四宮かぐやと白銀御行は最後に付き合ったのか?
まず【四宮かぐや】と【白銀御行】が結局付き合ったのかどうか?
結論から言うと、かぐやも白銀御行も最終的には付き合います。2人が正式に付き合ったのはコミックス16巻と、タイミング的にはほぼストーリー中盤になります。だから『かぐや様は告らせたい』の最終回は2人が付き合って大団円というオチとかではありません。
しかも実際にキスする関係に発展するのは、更に少し遡ります。両者が2年生時の文化祭において、白銀御行は告白するために盛大なサプライズを用意する。この秀知院学園の文化祭では「ハート」の贈り物をすると永遠の愛が叶うと言われていた。
そこで白銀御行はアルセーヌ・ルパン風の怪盗を演じる。アルセーヌはギリシャ語で「男らしい」。かねてから自分が言っていた言葉だった。四宮かぐやであればこの伏線を解読できると考えて、白銀御行はかぐやが来るのを学校の屋上で待っていた。
○態度で告白した白銀御行、言葉で告白した四宮かぐや
そして、かぐやがやって来たタイミングで白銀御行は大量の「ハート型の風船」を飛ばす。家柄で劣る白銀御行からすると、自分で告白することはやはり敗北そのもの。言葉に直接できないからこそ、大量のハートを飛ばすことで自らの好意を示した。
四宮かぐやはハートの風船を黙って嬉しそうに抱きしめるのであった。
その後、白銀御行は「スタンフォード大を受けろ!四宮、俺と一緒にアメリカに来い!」と遠回しに告白する。四宮かぐやも言葉ではなく、キスという態度で好意を示した。ここで2人の関係は一気に縮まって、ほぼ実質付き合った関係性になります。
ここまでのクダリはアニメ第3期の最後で描かれていたため、アニメ版でもストーリーの【大きな区切り】は既に付いています。
改めて2人が付き合うまでの流れをおさらいすると、【コミックス14巻】で白銀御行が最初に秀知院学園文化祭で「態度」で好意を示す。その後、【コミックス16巻】で四宮かぐやが最終的に「言葉」で白銀に告白して正式なカップルになります。
だから『かぐや様は告らせたい』という漫画タイトルではあるものの、結果的に四宮かぐやが「告白させられた」カタチになっています。
四宮家でお家騒動が勃発
だからアニメ版『かぐや様は告らせたい』でもめっちゃ良いタイミングで完結しています。今後アニメ版でこの続きが描かれるのか知りませんが、ここからは「2人が付き合った後」から「最終回までの展開」をざっくりネタバレしていきます。
ちなみに記事最後には面白い漫画だったかどうかも考察します。
無事付き合うことに成功した四宮かぐやと白銀御行だったが、四宮家ではお家騒動が勃発していた。かぐやの父親でもあり、四宮グループの総裁【四宮雁庵】は病で余命いくばくもなかった。強いカリスマ性を誇った総裁が消えることで危機に立たされる。
何故なら、四宮雁庵は敵対勢力に勝つためであれば、不正も平然と行う独裁者だったから。これまでの強権的な振る舞いのせいで、四宮グループは敵も多く作っていた。その中でも、海外で急激に勢力を伸ばしていた【四条グループ】が最右翼だった。
四条家は四宮家の遠縁の親戚関係だったが、かねてから方針の違いで対立してきた結果、日本国外に追い出されていた。しかし、もし巨大財閥同士が正面からぶつかり合えば、双方に多大な犠牲が強いられることは必至。全面衝突はお互い避けたい状況でもあった。
四宮かぐや奪還作戦
そこで白羽の矢が立ったのが【四宮かぐや】だった。四宮グループ総裁の娘を敵対する四条家に嫁がせることができれば、不毛な戦争を終結させられると双方の思惑は合致した。かぐやも不本意ではあったが同意し、秀知院学園の退学と白銀御行との別れを決意する。
何故なら、かぐやは帝王学を学んだが故に、グループ傘下で働く社員やその家族たちの行く末を優先させたから。
そして四宮家は10億円の手切れ金を渡すことで手を打とうとすると、何故か白銀御行は素直に快諾した。しかし白銀御行にとって、この10億円は「かぐやを奪い返すための軍資金」でしかなかった。まさにかぐや奪還作戦の火蓋は切られたのであった。
四宮かぐやは妾の子だった
その後、深謀遠慮の策を巡らす白銀御行だったが、総裁・四宮雁庵に「お父さん、娘さんを僕にください」と直談判に向かう。
何故なら、かぐやが一度既婚者になってしまえば、四条家との縁談は破談する可能性が高かったから。この無鉄砲な作戦に雁庵は思わず苦笑いを浮かべるが、白銀御行はかぐやを解放するためには雁庵の協力がどうしても欠かせなかった。
雁庵は「かぐや自身の選択」とどこか突き放すが、白銀は「貴方の為にした選択ですよ」と説得してみせる。仕事人間だった雁庵は父親らしいことは一つもしてこなかったが、かぐやは四宮グループとしての責務を果たすことで親子としての絆を確認できると考えていた。
この説得にどこか心を打たれた雁庵は、自らの遺言書が入った金庫の解除番号を白銀に教える。01300101という解除番号は、「母親が死んだ日付」と「かぐやが生まれた日付」の組み合わせだった。
実は四宮かぐやは【名夜竹】という水商売で働く女の子供だった。いわゆる妾の子だったが、この名夜竹は雁庵が心の底から愛していた女だった。だから、名夜竹の娘・かぐやを雁庵が愛していないはずがなかった。
かぐやの決意
その後、四宮かぐやが実質軟禁されていた本邸に向かう白銀御行だったが、四宮家の長男【黄光】は盗聴器を使って父・雁庵が遺言書を本邸に隠していた事実を知る。元々は弁護士に預けておくという話だったため、黄光は大慌ててで本邸をくまなく探す。
慌ただしくなった本邸で何か異変に気付く四宮かぐやの前に、縁談相手の四条帝がやって来る。そこで白銀御行が助けに向かっていることを知らされる。かぐやのことが昔から好意を抱いていた四条帝は告白するが、かぐやは「私の願いを叶えられるのは世界でたった一人」ときっぱり断る。
そして、かぐやは父親・雁庵と母親・名夜竹が、かつてひっそり愛し合っていた部屋に向かう。かぐやは幼い頃に見た記憶が残っていた。案の定、そこに遺言書が隠されていたが、かぐやの跡をひっそり付けていた長男・黄光に発見されてしまう。
ただ実際に追い込まれていたのは長男・黄光だった。既に黄光の傀儡だった次男・青龍は早坂愛たちに丸め込まれており、三男・雲鷹がかぐや側に加勢していた。「アニキがこの家の帝王になるなんてまっぴら御免。そもそもオヤジのカリスマがお前にはない」とばっさり切り捨てる。
最後は2人の愛で打開する
四宮かぐやは、この三男・雲鷹に幼い頃から徹底的に帝王学を教え込まれたせいで冷徹な性格に育っていたが、一方で自らの意志で動く強い決断力が培われていた。
そして、四条家との和平を果たすことを長男・黄光に提案する。この和平が成功した暁には、自らの立場の保障を確約させる代わりに、四宮グループの全権を委ねることも同時に提案した。あくまで四宮グループの安定を最優先させる黄光は、かぐやの決意を前にしぶしぶ認める。
しかし長男に全権委任されるのであれば自身に何のメリットがないとして、今度は三男・雲鷹がかぐやが持つ遺言書を狙う。
ただ逃げ惑うかぐやの前に現れたのが、白銀御行だった。ヘリコプターからぶら下がったロープはしごに捕まる白銀に、かぐやは見事にダイビングジャンプ。映画さながらの展開で困難を乗り越えた2人はさらに愛が深まるというオチ。
10億円の軍資金の一部もここに使われていました。
一足早くスタンフォード大学に進学する白銀御行だが…
その後、父親・雁庵の遺書は廃棄され、再び秀知院学園に戻ることができた四宮かぐやは、何やかんやで四条グループとのイザコザを収めることに成功する。しかし気付くと、白銀御行がアメリカ・スタンフォード大学に留学するまであと3日と迫っていた。
数日で白銀御行が学園から居なくなってしまうため、四宮かぐやの愛が露骨に溢れ出てしまう。簡単に言うと、2人のイチャコラ描写も増えます。どうしても中盤以降は付き合った後の話になるので、ストーリー終盤の内容はちょっとした蛇足感もあります。
白銀御行がいよいよスタンフォード大学に海外留学する前日、四宮かぐやは不安で眠れなくて寝坊してしまう。案の定、空港で送り出すことはできなかったが、四宮かぐやはサンフランシスコ国際空港に直接出向いて白銀御行を送り出すのであった。THEお金持ち。
かぐやは帰国後もネットを通して交流するなど、今の時代に「遠距離恋愛」はないに等しかった。実際、成田空港からサンフランシスコ空港に行くまでにかかる所要時間は9時間半程度とのこと。夏休みはカリフォルニアで過ごそうかなと語るなど、2人の愛は深まっていくばかりだった。
最終28巻はサブキャラの成長シーンがメイン
ということで、ここからがかぐや様最終28巻のネタバレになります。
最終28巻の内容は「サブキャラクターの最終回」が個別で描かれます。画像は四条槇妃のエピソード。親友・柏木渚が好意を寄せていた田沼翼と付き合っていたことにずっと悩んでいたが、ついに吹っ切ろうと決意する。その矢先、柏木渚に自分が翼を好きだったことがバレる。
そこで親友の四条槇妃に譲ろうと思って、柏木渚は田沼翼と別れてしまう。しかし、これを知った四条槇妃はブチ切れる。「友達に付き合っている男を渡すバカが何処に居るのよ!それにもう大好きなんでしょ?翼くんが。手放しちゃ駄目でしょ」と、四条槇妃は渚の背中を押す。
ここで四条槇妃はようやく翼への未練を吹っ切れた…というエピソードになります。ただ最後はラブコメ漫画らしく、柏木渚が翼の子供を妊娠していたオチが描かれたりするんですが、こういった各々サブキャラの「成長シーン」で大半が占められています。
ただ「皆のヒロイン」の藤原千花の最後だけは、相変わらず掴みどころがないまま終わっていたりすることも。
最終回はみんなで秀知院学園を卒業
そして最終回・最終話は「秀知院学園の卒業式」が描かれます。
スタンフォード大学に飛び級で留学した白銀御行は秀知院学園を中退していたものの、彼女の四宮かぐやの晴れ姿を見るためだけに帰国していた。白銀御行は校門前でみんなが出てくるのを待っていたが、粋な父親に渡された学生服を着て秀知院学園に侵入する。
かぐやが卒業証書をもらう姿を見届けた後、白銀御行はかぐやと一緒に生徒会室で在りし日の思い出を懐かしそうに語り合っていた。かぐやもスタンフォード大学への進学が決まるなど、今後の2人がどういう将来を歩んでいくかは誰の目にも明らかだった。
それ故、かぐやは今度はどうすれば白銀に「結婚のプロポーズさせられるか」を考える段階に進んでいた。
○何も変わらない日々とこれからの成長
ただこれは遠い遠い将来の話。かぐやは随分前に中退していた白銀御行のために「大きなサプライズ」を秀知院学園の生徒たちと共にわざわざ用意していた。
それが「白銀会長祝秀知院学園ご卒業」という垂れ幕と共に、みんなで一斉に花びらを撒いて白銀御行の卒業を祝うこと。突然のサプライズに思わず涙を浮かべる。最後は校長も儀礼的に卒業証書を渡してくれるなど、白銀御行は秀知院学園での楽しかった記憶が蘇る。
その後、白銀御行は生徒会のメンバーと共に、卒業式の打ち上げに向かう。新しい門出を迎えた彼らだったが、いつものなんてことない楽しい日々や関係性はこれからも続く。さらなる成長や飛躍を予感させつつも、あくまで人間的な部分は変わらない。
青春チックな終わり方で良き。
○5年後の未来はどうなっている?
一応、四宮かぐやの元使用人・早坂愛のエピソードにおいて、個別キャラクターの4・5年後の未来が描かれています。例えば白銀御行は既に起業しており、総理大臣だった父親の選挙の手伝いをするなど、藤原千花は政治家の道を志していることなどが分かります。
だから付き合う(告白する)という当初のゴールは割りと早々に達成しているため、『かぐや様は告らせたい』の中盤以降のストーリーは蛇足というかやや間延び感はあるものの、それは引き伸ばしというよりも最後キレイに話を落とすための「長い助走期間」だったと考えるといいか。
『かぐや様は告らせたい』は所詮ラブコメ漫画なのでテキトーに話を終わらせることもできたはずですが、最後まで丁寧にキャラクターの伏線なども回収されていたように思えます。
かぐや様は告らせたい 全28巻 総合評価・評判まとめ
そこで最後は『かぐや様は告らせたい』全28巻の個人的評価を下します。
『かぐや様は告らせたい』は割りと「秀逸なラブコメ漫画」だったと思います。財閥エリートという設定はやや奇をてらっているものの、だからこそ大げさな展開や表現も意外とリアルに映る。小うるさい講釈も不思議と耳障りでもない。
恋の駆け引きも「あるあるネタ」が多いため、男女問わず、年代問わずに共感を覚えやすい。各々の心理的な駆け引きも、しっかり笑いに落とし込んでいるため都度都度笑える。安易な工口に走らず、王道のキュンキュン要素を真正面から描いている点も評価したいところ。
また脇役もキャラクターが立っているのも良かった。藤原千花は一見するとアホキャラだが、ツッコミ役として活躍することも多い。キャラ間(相関関係)のバランスも絶妙に取れてて、各々が絶妙にスキマを縫って面白く立ち回っている。セリフにしても刺さる言葉も意外と多い。
○かぐや様は今後も発行部数を伸ばしそう
このキャラクターが一人ひとり人間として「成長していく過程」も醍醐味。全てのキャラがちゃんと満遍なく掘り下げられるので、その分だけ読者側の共感ポイントも多い。最後は一人ひとりが抱えた悩み(伏線?)が回収されるので、全28巻を読み終えた後のモヤモヤ感はない。
だから全体として評価すると、『かぐや様は告らせたい』は王道のラブコメ漫画として無難に面白かった。恋愛から青春まで幅広いキュンキュン要素が描かれているため、単純なラブコメ漫画で収まっていないのも発行部数の多さに繋がっているか。
アニメや実写映画などがマルチヒットした理由も、原作漫画が単純に面白かったからでしょう。作者の絵柄が変に洗練されていないのも、逆に5年後10年後に読み直しても古臭さを感じさせないか。『かぐや様は告らせたい』はこれからもジワジワと発行部数を伸ばしていくに違いない。
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