『中間管理録トネガワ』のネタバレ感想をレビュー。作者は福本伸行(協力)、萩原天晴(原作)、橋本智広、三好智樹(漫画)。掲載誌は月刊ヤングマガジン。出版社は講談社。ジャンルは青年コミックのスピンオフギャグ漫画。
この『中間管理録トネガワ』はいわゆる『カイジシリーズ』のスピンオフマンガ。ただスピンオフ漫画でありながら、2017年の「このマンガがすごい」男編1位に選ばれるという快挙を達成www
まさに「大出世」。『中間管理録トネガワ』の累計発行部数も4巻発売の時点で既に100万部超え。もしかしたら5巻発売済みの現時点では、累計発行部数は150万部ぐらいは到達してるぐらいの勢い。
ということで今回ドル漫では『中間管理録トネガワ』がどこが面白いのか、どうおすすめなのかを徹底的に考察レビューを書いてみました。AmazonのKindleや楽天koboなどでも試し読み・立ち読みできますが、ネット書店で購入するときの参考に使ってください。
中間管理録トネガワのあらすじ・登場人物
主人公は利根川幸雄。カイジとの一戦で敗北し、その直後に焼き土下座という罰ゲームを強いられた金融業をなりわいとする帝愛グループの幹部のオジさん。まさに役職的にはTHE中間管理職。
この利根川幸雄の上司であり、帝愛グループの会長に君臨するのが兵藤和尊。賭けや読みに関しては天才的であり、そういった才覚をフルに活かしたことで経営的に大成功を収めたと思われます。
ただ故に、とてつもなく傲慢。唯我独尊。気分屋。そして刺激を常に求めている。「死のゲーム」という文字からも分かるように、どうやらカイジたちと一戦を交える前(限定ジャンケンや電撃鉄骨綱渡りetc)の状況らしい。それ故に常に利根川幸雄は兵藤に振り回されてしまう。
つまり利根川幸雄が予定していた「週末のゴルフがパァ」になってしまった。まさに中間管理職としての悲哀や苦悩、葛藤が利根川幸雄という男の目線を通してコミカルに描かれる。もし兵藤和尊も利根川がゴルフのことを考えているとはついぞ思わないでしょう。
当然、中間管理職である利根川の悩みのタネは上司(兵藤和尊)だけではない。言うまでもなく巨大な金融コンツェルンの幹部ですから、それだけ利根川は多くの部下を抱える。しかも帝愛グループの服装は「黒服+サングラスのみ」と決まってるので、部下を把握するだけでも大変。
○利根川が上司からも部下からも苦労させられる内容
そこで兵藤の命によって始まった例の新プロジェクト(ネタバレしませんが限定ジャンケンの作成過程などが描写されます)を進めるにあたって、利根川は部下の黒服たちに自己紹介をさせる。
ただ「左衛門三郎二郎」という、とんでもない人名の部下が登場。ただでさえ何十人という部下を覚えなきゃいけない状況。思わず利根川も「ぐっ!何ィーー!邪魔…!」と落胆してしまう。
まさに上からも下からも板挟み状態の中間管理職。果たして戦うサラリーマン・利根川幸雄に未来はあるのかッ!?
黒服たちがアホすぎて面白いwww
『カイジシリーズ』では黒服たちがクローズアップされる機会は少ないですが、この『中間管理録トネガワ』では良くも悪くも黒服が目立ってくれる。本当に原作漫画をぶち壊すほどの「黒服たちの悪ノリ」が実に面白い。
黒服は雑用ばっかりやらされてるのかと思いきや、意外と有能。画像は黒服がパワポ(パワーポイント)を華麗に扱って、利根川幸雄も良い意味で驚いてる場面。
確かに社会に出たら割りとパワポを使う機会は少なくないですが、どこで目立ってくれてんねん。ちなみにパワポを使ってるのは前述の左衛門三郎(笑)
ただ有能な黒服は一部であり、基本的にどっかヌケてる。そして要所要所で悪ノリが炸裂する。もし意識的にフザケてないのであれば色々とヤバすぎる。
例えば、ある時の黒服は「ポインテッドトゥシューズ」を履いて出勤してくる。もちろん勤務中。ファッションは気付いてもらえると嬉しいもんですが、それにしてもこのテレ顔が腹立ます。ちなみにコイツが左衛門三郎(笑)
有能社員であるが故に、自分のやりたいことが許されると勘違いしてるタイプ。お前は何故グーグルやアップルといった外資系企業に行かず、わざわざ帝愛グループに就職したのかと小一時間問い詰めたくなるレベル。
他にも海老谷という後に逮捕されてしまうぐらい無能な社員だと、利根川幸雄にある不手際に関して喫茶店で謝罪する場面で、何故かデラックスパフェを注文。しかも食いながら利根川に謝る。小学1年生か。
利根川の「百歩譲ってコーヒーゼリー」という謎の妥協っぷりもよく分かりませんが(笑)
○中間管理録トネガワでは一条もポンコツっぷりを発揮w
またカイジを苦しめたパチンコ台「沼」を取り仕切ってる一条も登場。原作漫画の『カイジ』では優秀な社員として描写されていましたが、コイツもかなりポンコツ。「沼」は会長・兵藤と利根川幸雄しかクリアできてませんでしたが、もちろん接待。
そのときの一条の接待っぷりが描かれるんですが、見事に下手。三文芝居、大根役者、そういったレッテルを貼られて然るべきな露骨に大げさ。そういえば一条は黒服上がりだったはずですから、どうしてもポンコツっぷりが抜け切らないのか。
ちなみに女性の黒服(西口冴子)など『中間管理録トネガワ』では様々な個性的な黒服たちが登場します。
見た目は同じように見えても中身の描き分けが上手くて笑えます。この回では利根川幸雄は意外と紳士な振る舞いを見せてくれるなど、笑いの振り幅が広い。自民党の豊田真由子様には是非読んでもらいたいところ。
利根川幸雄は意外と優しかった件www
だから利根川幸雄は意外と優しい。勝負に関してはかなりあくどさを見せたものの、利根川幸雄の見た目や態度そのものは紳士的。この『中間管理録トネガワ』では、その見た目さながらの紳士っぷりを発揮してくれます。
例えば帝愛グループ内でインフルエンザが蔓延し、次々と部下の黒服たちが倒れていく。その時に利根川幸雄はインフル予防のために「洗い方をレクチャー」するんですが、実に丁寧かつきめ細やか。なんという「こなれ感」。
「あまり舐めるな手洗いを」と黒服を優しく叱責してる姿は、マスク姿も相まって経験豊富なベテランのお医者さん。このまま手術室に足を運びそうな勢いです。
利根川が関西支社に出張した場面では、部下から就業後に飲みに誘われやすいように「クロスワードパズル」を始める。関西支社は売上が底辺レベルなんですが、その理由は関西支社を仕切っていたパワハラ全開のクソ上司だった。
最初、利根川が直接飲みに誘うものの、クソ上司が割って入って中止させてしまう。そこで利根川はどちらの顔を立てつつも…という配慮を見せる。最終的に利根川は大阪グルメを堪能できないものの、周囲に目を配る気遣い力に感服。
○利根川はムーンウォークも華麗にこなせるw
他にも某黒服の結婚式ではめっちゃカッコよくムーンウォークを決めて、利根川はその場を盛り上げることも。さながらトネガワジャクソン。いつムーンウォークを習ってんという器用っぷりですが、かつて兵藤和尊会長を喜ばせるために習得したのか。
最初、利根川はは結婚式特有のお寒いノリに嫌気が差していたものの、実際場が盛り上がると「空気を読む」という能力を華麗に披露してみせる。ここまでサービス精神旺盛だと、利根川ってただの誰からも愛される紳士ですやん。
兵藤会長が流行に敏感すぎるwww
この『中間管理録トネガワ』は、あくまで利根川幸雄が主人公。
中間管理職である以上、当然上司がいる。利根川幸雄の上司と言えば、もちろんアクマ的会長の兵藤和尊。この『中間管理録トネガワ』においてもバリバリしゃしゃり出てきて、読者を笑わせてくれます。
この兵藤和尊は原作の『カイジシリーズ』と変わらず、基本的には外道。
例えば黒服たちにピラミッドをさせて、その頂点で兵藤和尊が横になって鎮座。
でも嫌がらせとしては地味すぎる。兵藤和尊はガリガリのおじいちゃんだから、おそらく体重もそこまで重くないはず。体圧も分散されて、意外と黒服たちはそこまで負担感は少なそう。小学校や中学校の体育祭でも、この兵藤和尊を見習うべき(笑)
だから外道ではあるものの夜10時だか以降にはすぐ寝ちゃうなど、この『中間管理録トネガワ』では「ただのお爺ちゃん」として描写されることが多く面白い。でもおじいちゃんのくせに、何故か兵藤和尊は意外と若者ばりに流行に敏感。
例えば「ブンブンだの…ハローユーチューブだの…」と明らかにHIKAKINを知ってる。他にもフォローだのリツイートだのと、兵藤は絶対Twitterもやってる。こんな感じでディスりつつも、兵藤和尊の世の流行りを追いかけてることが分かります。
ちなみに興味があればYouTuberなど有名人の愛車一覧まとめもご参照。
○兵藤の謎のBoAブームにハマる
個人的に面白かったのが、この場面。どうやら兵藤和尊は恋愛の歌をディスってる模様なんですが、最後の「タイトなジーンズだの…ねじこむだの…」とどっかで聞いたことがあるフレーズ。少し思い出すのに時間がかかったんですが、これ完全にBoAの『VALLENTI』。
残念ながら「私という戦うバディーだの…」というフレーズまでは書かれてないものの、何故今BoAやねん…と誰もがツッコミを入れてしまう絶妙な流行り性。確かBoAのこの歌が流行ったのが2000年代前半。兵藤和尊は流行りが好きっぽいのに何故このチョイスwww
中間管理録トネガワのおすすめ評価・評判・口コミ総括
以上、ドル漫による『中間管理録トネガワ』の考察レビューでした。
結論から評価を書くと、まさに利根川や黒服たちが「悪ノリ全開」で面白い。誰かが不快になる悪ノリではないのも良い。
どうしてもムチャクチャな笑いを作ろうとする場合、毒舌であったり悪口であったりというのが多い中、『中間管理録トネガワ』はまさに中間管理職の大人読者でもクスッと笑える内容。「パワポ」といったワードもサラリーマン読者には絶妙なチョイスでしょう。
また『中間管理録トネガワ』は、漫画としてゴチャゴチャ感がなく読みやすい。その回のテーマに沿ったボケを繰り出すので、ギャグマンガにありがちな脈絡ないボケの連発もない。さながら渋滞しない道路。読後感も良い。
『中間管理録トネガワ』は本当に頭の良いマンガ家が作った実に良質なスピンオフギャグといった評価。『カイジシリーズ』が未読でもキャラクターものとして面白いと思います。
ちなみに、同じカイジスピンオフマンガの【ネタバレ感想】一日外出録ハンチョウが面白いwなども既にドル漫では考察済みなので、もし興味があればごらんください。
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