『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』のネタバレ感想をレビュー。作者は船津紳平。原作は天樹征丸、金成陽三郎、さとうふみや。掲載アプリはマガジンポケット。出版社は講談社。ジャンルは少年コミックのスピンオフ漫画。
AmazonのKindleや楽天koboなどで無料で試し読み・立ち読みができるんですが、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』は地味に人気が沸騰。楽天だったかAmazonだったか忘れましたがランキング上位でした。
そこで今回ドル漫では『犯人たちの事件簿』がどこが面白いのか、またおすすめポイントはどこかを徹底的に考察しました。今回の感想レビューを購入時の参考にしてください。
金田一スピンオフ漫画 犯人の事件簿 あらすじ内容
少年マガジンが誇る推理漫画と言えば、『金田一少年の事件簿』。1990年代に連載が開始し、キンキキッズの堂本剛で実写ドラマ化されたり、アニメ化されるなど人気を博しました。何を隠そう筆者ドルジ露瓶尊もゴリゴリのリアルタイムにハマっていた世代。
『金田一少年の事件簿』の主人公は、もちろん金田一一(きんだいいちはじめ)。名探偵・金田一耕助の孫だけあって、見事に血筋を受け継ぎ様々な難事件に遭遇しては名推理を展開してズバッと犯人たちを言い当てる。
でも漫画タイトルを見ても分かるように、今作『犯人たちの事件簿』では金田一一が主人公ではありません。じゃあ誰が主人公なのか?
それがかつて金田一に解き明かされてしまった事件の犯人たちが主人公。画像はオペラ座館殺人事件の犯人・有森裕二。犯行を行うホテルに事前にチェックインしようと試みるですが、さすがに自分でも怪しすぎる格好に不安感しか抱いていない場面。
だから『犯人たちの事件簿』の内容としては、犯人目線で金田一に犯行前から犯行後の追い詰められるまでの心情や状況を面白おかしくコミカルに描写したスピンオフ漫画になります。例えば1巻だと「オペラ座館殺人事件」「学園七不思議殺人事件」「蝋人形城殺人事件」「秘宝島殺人事件」の犯人たちが登場します。
犯人たちのリアル(?)な心情がワロタwww
『犯人たちの事件簿』の面白いポイントを結論から書いちゃうと、リアルに描写された犯人たちの心情。リアルと表現すると語弊がありますが、どっか微妙にマヌケ。
例えば「オペラ座館事件」の犯人・有森裕二。演劇部に入る高校生なんですが、同じ部内に憎き部員がいる。そこでオペラ座の怪人に見立てて、合宿中に犯行を企てることを決意。ただ同じ高校に通ってる金田一一が偶然にも参加。当然、有森裕二は「名探偵の孫ってヤバいやん…」と震える。
犯行を一度は断念しようと思ったものの冷静に考えると、金田一一はあくまで孫。そのため有森裕二は「祖父は名探偵…しかし奴は孫…二親等…孫ならギリいけるか!?」と思い留まる。なんという悪魔的楽観(笑)
確かに政治家には世襲の二世議員が多いですが、自民党を筆頭にそこまで大したことがない国会議員も多い。ただ世の中には医者家系が確実に存在するように、意外と血筋も侮れない。案の定、有森裕二はズバッと金田一一の名推理にやられてしまいます。
犯人たちはすぐ自惚れてしまう
他にも学園七不思議事件の犯人・的場勇一郎だと、かつて犯した事件の秘密(壁に埋まった白骨遺体)を桜木るい子に発見されたため咄嗟にやってしまう物理教師。しかも金田一一が運悪く部屋にもうすぐやって来る。
そこで「こんな短時間でトリックなんて思いつけるか」と落胆するものの、土壇場でこそ起死回生の悪魔的な発想がひらめくことも。
ただ的場に悪魔的ひらめきが舞い降りる瞬間がちょっとしたバトル漫画の覚醒シーン。
的場がガタガタと震えてるのは、自分の才能に対して震えてる。この直後、膝を打って満面の笑みを浮かべる。お前の良心の呵責はどこに行った!?かなり不謹慎ではあるものの笑っちゃいます。
的場以外の犯人にも共通するんですが、遺体発見時などは当然事件とは無関係であることを装う。基本的に誰が犯人であるかは分からないように描かれてる。逆に考えると、犯人たちは「犯人ではない演技」がとてつもなく上手い。
結果、多くの犯人が「私にこんな演技の才能があったとは…」と新たな一面を再発見して、やはり自らの非凡さに震える。金田一少年シリーズだと常習犯は高遠ぐらいでしょうから、ぶっつけ本番で演技できたら大したもんです。とはいえ、やっぱり不謹慎(笑)
犯行はぶっつけ本番だから何が起きるか分からない
だから計画的な犯行であろうと突発的な犯行であろうと、どうしても犯人たちは「ぶっつけ本番」で臨むことが多い。事前に予行練習は行えないため予期していない事態に直面しがち。やはり『金田一少年シリーズ』はミステリー漫画ですから、最たる例は「トリック」でしょう。
例えば、蝋人形城事件の犯人・多岐川かほるの場合。大量に蝋人形が用意されたお城で犯行を行う。
何故なら密室で犯行を行った場合など、蝋人形のフリをすれば時間差で自分のアリバイを作れるから。アイデアは素晴らしくても、犯行中に不慮の事態が発生。何やかんやがあって部屋の温度が上がってしまう。
結果、人形のフリをして座っていたイスに「自分の大量の汗の結晶」が残ってしまう。何故すぐ拭いておかなかった!?女性にとって一番恥ずかしすぎる結末。
他にも既にこの感想レビュー記事で何度も登場してる、学園七不思議事件の犯人・的場勇一郎の場合。冒頭のあらすじでも説明しましたが、初っ端から難題に直面した。実際ホテルのオーナーも「怪しさがすごい…泊めたいという気持ちが一ミリも起こらん」と震える。
詳しくはネタバレしませんが、結果的に的場は無事チェックインできます。でも更に新たな問題に直面。「犯人が謎のファントム」臭を出すために、部屋の中に強烈なメッセージを残そうと画策するものの、ぶっつけ本番であるが故に四苦八苦。
何故なら普通にペンで「地獄の業火に焼かれよ」と壁に書いたところで全く怖くなかったから。むしろ達筆感からお母さんが息子にきつく叱ってるだけのメッセージにも思えます。「宿題をしないとごはん抜きよ」の最上級バージョン。
これだと廃墟でヤンキーが描いたと思しきイヤらしい文言の方が、まだ夜中という時間帯やシチュエーションも相まって恐怖感を演出できるでしょう。
トリックを作るのも一苦労だよトホホ
同じく的場だと階下に泊まってる部員の首を絞めようと、窓枠に縄を仕掛ける場面は完全に命からがら。的場もトリックを仕掛けた後、思わず「SASUKEかよ!」とツッコミを入れる。これだと素直に後ろからガバッと襲った方が早い。
だから『金田一少年シリーズ』に限った話ではありませんが、推理漫画のトリックって意外とふざけたトリックが多い。主人公の名探偵がサラッとトリックを暴くものの、「いやコレどうやって仕掛けてん…」と頭をかしげることもしばしば。
例えば青山剛昌の『名探偵コナン』22巻からだと、走ってる列車の走行中に窓ガラスを破って、その外に遺体をぶら下げる。そのぶら下げた糸をドアと結びつけることで、誰かがドアを開けた瞬間に遺体が落ちる仕組み。結果、犯人はアリバイを確保できるという仕組み。
ただ無茶やろ…としか言いようがない。列車は揺れるため不安定。しかも大柄な男を外に出すだけても大変。釣り糸そのものが切れなかったとしても、不意の瞬間に間違って外に落ちる可能性もある。
それをキューピー三分クッキングみたいに「はい準備は完了」とあっさり言ってくれるなよと(笑)
金田一外伝 犯人の事件簿 おすすめ評価・評判・口コミレビューまとめ
以上、ドル漫による『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』が面白いかつまらないかの考察レビューでした。
結論をまとめると、『犯人たちの事件簿』はそれなりに面白い。多くのスピンオフ漫画の場合、原作からかけ離れた突拍子のないことを描写しがちですが、金田一少年シリーズの土台を巧みに活かした面白さが展開されてるのが高評価。
例えば、「トリックは意外にお金や労力が必要」といった現実的な苦悩だと、前述の多岐川かほるが全ての蝋人形を手作業してる場面など犯人の切実感が伝わって面白い。他にも的場が白骨遺体を孫が描いた似顔絵で隠してみたりといったデフォルメまで、原作を幅広くイジり倒してるのがおすすめポイント。
ただ強いて言えば、あくまで「当時の金田一作品を読んだことがある前提」で作られてるため、最近の『金田一少年の事件簿』しか読んでない読者などはピンと来ないかも。そういう意味では若干おすすめポイントは下がるかも知れない。
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