『チェンソーマン』などで有名な漫画家が「藤本タツキ」。グロ漫画家のイメージも個人的に強かったんですが、2021年公開の『ルックバック』という読み切り漫画では良い意味でいろいろ裏切ってくれました。
そして2022年7月4日に新たな読み切り漫画『フツーに聞いてくれ』が公開されました。ただ今回はチェンソーマン二部の連載を再開させることもあって、原作を務めているだけ。作画そのものはほぼ同時期にデビューした遠田おとという方が描いてるそう。
それでも絵柄は藤本タツキにかなり寄せているため、何の違和感もなく【藤本タツキの漫画】として読めるに違いない。「遠田先生の絵はお兄ちゃんの絵にとても似ているのでもうお兄ちゃんは絵を描かなくてもいいのではないかと実感しました」とは妹さんのツイート。
ただできれば冨樫義博せんせーの絵に似せてもらうことはできませんか?(T_T)
そこで今回ドル漫では「フツーに聞いてくれのネタバレ感想」をサクッとレビューしたいと思います。果たして『フツーに聞いてくれ』は面白いのか?もしかすると考察界隈を盛大にディスっている漫画だった?
奇しくもYouTubeでバズってしまった青春ボーイ
まずは『フツーに聞いてくれ』の内容あらすじを簡単に解説します。
主人公はどこにでもいる高校生。この男子高校生が中学時代から好きだった女子生徒に告白するシーンから始まる。ただ男子高校生の告白方法が今どきというか、少し変わっていた。何故なら、YouTubeに「自作の告白ソング」をアップロードするという手法を使ったから。
でも翌日は「想像通りの展開」が待っていた。
男子高校生に全く興味がなかった女子生徒は、LINEで即座にクラスメイト全員にYouTubeの動画リンクを拡散していた。「あの動画めっちゃウケたからラインで拡散しちゃった」と臆面もなく自白する。瞬く間にYouTubeの動画は誰もが知ることとなった。
○意図しない面白ハプニングが次々発見される
メンタルズタボロの男子高校生はYouTubeの動画を削除しようと考えたが、とあるコメントを読んで思いとどまった。何故なら、この告白動画には「心霊映像」が偶然映っていたから。しかも、とある生徒からは「動画を消すことは霊の怒りを買う行為」と警告されてしまう。
結果、日本中に心霊動画として拡散されて、再生数がうなぎ登り。いわゆるバズってしまう。しかも、逆再生するとアメリカの銃社会への批判メッセージが込められていたことも判明。もちろん単なる偶然だが、「意図しないハプニング」が次々と発見されて最終的な再生数は4億を超える。
全世界が待望する中、第二弾の新曲のタイトルが【フツーに聞いてくれ】。
ただ偶然は二度も三度も起きるわけじゃない。何のハプニングもない動画の再生数は3万再生。これでも素人が作った動画の再生数としては充分だと思いますが、世間から急速に飽きられたことを実感した男子高校生は動画をそっと消した。
しかし意中の女子生徒は、実は男子高校生が作った歌詞が「二人が一瞬だけ過ごしたとある日常」が切り取られていた内容だと知っていた。これを伝えられた男子高校生の胸には様々な思いが去来する。果たして二人の恋路はどうなるのか?という感じで終わっています。
【漫画】フツーに聞いてくれの総合評価評判まとめ
最後は『フツーに聞いてくれ』の個人的な総合評価で締めくくります。
今作のテーマは「作者と読者のズレ」といったところか。作者はAという意図で描写したとしても、読者はBと解釈することが往々にしてある。とりわけ昨今は考察ブーム。どの口が言ってるのかって話ですが、明らかにこじつけ的な解釈かも、という考察がなくはないのも現実でしょう。
「猫が太陽の象徴を表している」といったナレーションを読む限り、太陽の神ニカなどが話題になった『ONE PIECE』などを暗にディスっているようにも思えます。ワンピースの伏線やハンターハンターの伏線も当ブログでは考察してますが、さすがの天才漫画家でもここまで初期から考えてまへんで、とでも言いたげ。
だから【作者の意図】と【読者の解釈】が合致してないという現象はわりと「漫画家あるある」なのかも知れません。
他にもカッコつけた壮大なメッセージを伝えるよりも、身の回りで大事な人に向けた素朴なメッセージのほうが遥かに重要ということも言いたげな印象も。そう考えていくと、上手いことキレイにまとまったオチではあるのでしょう。
○運否天賦も重要
ただ「商業漫画」という視点で考えると、初期で描いた展開や設定が神がかり的に繋がることも少なくないはず。
『バクマン。』でも描かれていましたが、特に長編漫画は後半ほどネタ切れしがち。そうすると初期の設定を意図的に繋げて「伏線が回収させたように見せる演出」も少なくない。こういう偶然を活かしてこそ、実はプロ漫画家なのかなとも思ったり。
今作の告白動画にしても、何故アップロード前に気付かないんだよレベルの偶然が重なっているわけですが、【人(アシスタントや編集者)との出会い】も含めて運要素が多いんだから、別にそこらへん全部ひっくるめた上での作品のクオリティだと思う。
結局、「自分が考えたアイデアをまるまるカタチ」にできたところで、その範疇を超える面白さは表現できないわけです。もちろん神がかった天才漫画家・藤本タツキであれば別でしょうけど、人知を超えた面白さを体現するには運否天賦も多分に絡んでくるのでしょう。
そもそもどういう商品にも通じますけど、「消費者が何を望むか」が一番重要。作品のメッセージやクオリティを横において盛り上がってる考察勢に対する皮肉が込められてるのかも知れませんが、「そう聞こえた」「そう見えた」のであればそれはそれで【真実】として漫画家さんは甘受すべきなのかも知れません。
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