昔から人気のジャンルと言えば「スポーツ漫画」。マンガというコンテンツがビジネス化されて以来、割と当初からスポーツ漫画のヒット作品に恵まれているジャンルかも知れません。
そこで今回は「スポーツ漫画の作り方や描き方」に関するマンガ制作記事を私ドルジ露瓶尊が執筆したいと思います。
ボールやバットなど「用具」を意識して描け!…スポーツ漫画の作り方
まず最初の一つ目のコツは「個別のスポーツにおける用具・用品」を意識して描くこと。
世の中には様々なスポーツが存在しますが、例えば野球用品だとバットやミットが特徴的。サッカーには当然バットがありません。それぞれのスポーツ競技で使用する用具やアイテムは、やはり形状や特徴が細かく異なる。
スポーツ漫画の大半は「球技」を題材にしていますが、ボール一つですら野球ボールとテニスボール、サッカーボール、ラグビーボールは大きさから模様などそれぞれ違うことはスポーツに詳しくなくても周知の事実でしょう。
つまり「それぞれのスポーツ特有の用具やアイテム」を丁寧に描ければ、どういうスポーツ漫画であるかが苦労せずに読者にパッと伝わる。野球のバットにしても金属バットや木製バットなどがあり、その違いを描き分けることで高校野球なのかプロ野球なのかも描き分けられる。
例えば『あさひなぐ』という薙刀(なぎなた)漫画の一場面を見てみると、しっかり防具やナギナタを描くことで薙刀スポーツであることがすぐ伝わります。ただ強いて言えば、画像の場面だと剣道との違いが分かりづらいため、ナギナタの長さ感をもっと表現できると良かった。
だから、どうしてもスポーツ漫画を描こうとすると、選手の激しい動きのシーンに意識がいきがち。もちろん大事な部分ではあるものの、肝心の「何のスポーツであるか?」がボヤけてしまうと意味がない。
例えばサッカー漫画の場合、激しいシュートのシーンでもそこにボールが描かれてなければ、もしかすると格闘漫画やその他のスポーツ競技と勘違いしてしまうこともある。
つまり効果線などよりも実は、スパイクの裏の模様や形状、革のグローブの結び目、ボールの縫い目などをリアルに描写するだけで「スポーツ漫画としての迫力」を十二分に演出できる。特に見せ場のシーンで緻密に描くだけで、読者や編集者に対して強烈な好印象を与えられるはず。
【マンガ制作】野球漫画を作るコツでも述べていますが、実はスポーツ漫画の制作においては「無機物を丁寧に描写する力」が意外に求められるということ。
団体スポーツでもキャラクターは少なく!…スポーツ漫画の作り方
続いて2番目のスポーツ漫画作りのコツは「キャラクターの人数」。
サッカーや野球が好例ですが、人気スポーツはいかんせん団体スポーツであることが多い。例えばサッカーの試合は11人vs11人で構成されるため、一試合だけで22名分のキャラクターが必要になってくる。
ただ冷静に考えるまでもなく、全員を描こうとすると漫画がゴチャゴチャしがち。またキャラデザの引き出しの多さも無意味に求められるため、漫画家さんの立場で考えたらかなり辛い・面倒くさい作業でしょう。
でも、全員の選手分のキャラクターを用意する必要はない。こんなもん一人ひとりのキャラクターを描いていたら、紙幅がいくらあっても足りない。もっと言えば「スポーツ漫画=必然的にキャラクターの駒を量産しなければいけない」というのは単なる思い込みにすぎない。割とありがちなミス。
何故ならスポーツ漫画であっても、所詮は「主役(主人公)は一人」だから。つまり、キャラクターのメインの視点は主人公だけに絞っていい。実際のスポーツ競技においても、活躍できるのは数人の選手だけであることからも明らか。全員の選手をクローズアップする必要は皆無。
特にスポーツ漫画を連載した当初は尚更。
例えばサッカー漫画で有名な『キャプテン翼』の初回シーンを読んでみると、大空翼と若林源三の二人だけでストーリーが構成されていることが分かります。もちろん現在の『キャプテン翼』のキャラクターはたくさんいますが、いきなり序盤から色んな選手を登場させても読者は覚えられない。
もちろん数人だけに描写を絞ると実際には試合が進まないため、そこは他の選手をモブキャラとして「目立たない範囲」でしっかり描けばいい。もし人気が出るようであれば、そこで初めてメインに活躍するキャラクターとして格上げさせればいい。
つまり「モブキャラを作る勇気」とでも言い換えてもいいのかも知れない。スポーツ漫画だけじゃなくて全員のキャラが活躍するのは不可能。キャラ間で活躍・不活躍のメリハリが必要になってくるということ。
試合そのものがドラマ…スポーツ漫画の作り方
最後のスポーツ漫画を作るコツは「ドラマ」。スポーツ漫画のストーリーはどうしても一本調子になりがちではあるものの、やはりドラマは読者を引き込む大きな要素であることに違いはない。
ただスポーツ漫画でのドラマの作り方はシンプル。何故なら、「試合」そのものがドラマだから。つまり試合外でドラマやストーリーを作る必要がない。あだち充作品など例外こそありますが、肝心の試合以外で話を展開させようとすると失敗する。
例えば、サッカー漫画であればドリブルで敵キャラを抜いたorボールを奪った、シュートを放ってゴールを奪ったorシュートを止めてキーパーが神セーブしたなどが好例。野球漫画であればピッチャーが三振を取ったorバッターがホームランを打ったなど、その描写だけで「ドラマ」が成立する。
先程のスポーツ漫画の作り方と合わせて考えると、数人のメインのキャラクター同士の攻防を描くことが重要。漠然とした試合の流れはモブキャラも使って作りつつ、見せ場ではメインの選手を活躍させるのが良いんだと思います。
コメント